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ニュースレター

2012年08月30日
性被害・セクハラ
角崎 恭子

性犯罪被害者の心理と行動について   弁護士 角崎 恭子

【高まっている被害者心理理解の必要性】

私自身が読んで非常に勉強になった、「性犯罪の被害者心理への理解を広げるための全国調査事業報告書」をご紹介させていただきます。

これは、NPO法人日本フェミニストカウンセリング学会の調査グループが調査を行い、性犯罪被害者のケアにあたっているカウンセラー30名から得た回答を分析したものです。

この調査は、性犯罪被害者の心理状態やその後遺症について、裁判関係者を始め一般の人達の理解を深める必要性から行われたものです。最近、性犯罪事件では、「被害者の行動として到底納得できるものではない」等の理由から、被害者の供述の信用性が否定された結果、無罪判決が多く出されています。従って、裁判所に被害者心理を理解してもらう必要性は、ますます高まっていると言えます。

例えば、加害者が、勤め先の上司や大学・大学院の指導教授、中学高校の教師等、被害者に対して優越的な立場にあれば、被害者は拒否したり逃げたりすることが難しく、被害が継続し易くなります。ですが、裁判所では、「被害の継続に鑑みれば、被害者の同意があった可能性が排除できない」等と判断されてしまいます。ですが、拒否できないことと同意は、根本的に違います。

被害者から見れば、加害者の意に反すれば、首になったり研究室を追い出されたり、不利な評価を受けて昇進・昇給や研究職のポストの獲得が困難になったりすることは容易に想像がつきます。そのため被害者は、会社や学校等に対して声を上げることはせず、加害者が自分の気持ちに気付くようそれとなく意思表示をしたり、あえて加害者に近付き、加害者の言動のコントロールを試みたり、加害者と円満な関係を保ちつつ、話合で決着をつけようとしたりします。ですが、加害者は、それらの被害者の行為を逆手に取り、さらに加害行為を継続しますので、悪循環に陥ってしまいます

【多様で個別具体的な被害者の心情がわかる】

この報告を読んで、私が特に理解されにくいと感じた被害者の行動は、被害を受けた後にお礼メールを送ったり、加害者からの呼出に応じて自ら加害者のもとを訪ねたり、加害者と恋愛関係にあるかのようなアピールをしたりといったものです。ですが、お礼メールには、加害者との関係の悪化を防止し、「尊敬」しているとアピールして、性的な関係になりたくないことを伝える側面があります。

また、呼出に応じるのには、加害行為を認めさせて謝罪をさせ、加害行為によって打砕かれた自らの尊厳を回復させる、あるいは、加害者が何をするか分からないため、接触の機会を増やして加害者の行動を監視する、加害者と会う時間や場所等を多少でも自分に有利なものにするという側面があります。

加害者が既婚者の場合や、上司や教育関係者等、被害者との性的な関係が不適切な場合には、恋愛関係のアピールにより、加害者の妻が怒ってきたり、会社や学校から指導を受けたりして、強制的に加害者と離れられることが期待できます。

被害者の行動は、表面上は非常に多様で、意図や目的を理解しにくく、場合によっては、「不自然]、「不注意」等と言われかねないものですが、被害者の心理を正確に理解できれば、このような誤解は少なくなるでしょう。

厚生労働省も、平成23年12月に「心理的負荷による精神障害の認定基準について」という通達において、セクハラの被害者が、加害者に迎合するメールを送ったり、加害者の誘いに応じたりしても、これらはセクハラ被害を単純に否定する理由にはならないこと等を明示しています。

社会の意識を変えることは、一朝一タにはできませんが、この調査は、多様で個別具体的な、被害者の生の心情を明らかにしてくれます。

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