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vol.7 書評「女性のいない民主主義」前田健太郎著(岩波新書)

今から数年前、大学で政治学の講義を担当することになった筆者(東京大学大学院法学政治学研究科・准教授)は、全28回の授業日程の中で、1回は、ジェンダーの話をする日を設けるという計画をたてた。だが実際に授業を行うために、ジェンダーと政治に関する本や論文を読み進めていくと、筆者は、男女の不平等にまつわる政治の話は、到底、一回で済ますことができるようなものでないことに気付かされた。それどころか、あらゆる政治現象が、ジェンダーと関係してくるように思えてきたと言う。

そんな経験を踏まえて、筆者は、本書で、政治学の教科書に取り上げてきたテーマごとに、主流の学説を紹介しながら、ジェンダーの視点から分析をしていく。

例えば、「話合いとしての政治」というタイトルで、「理想の政治」を定義づける考え方を次のとおり紹介している。

  

「政治の基礎となるのは、政治共同体の構成員による話合いである。公共の利益は、誰か1人がその内容を決めるものではなく、多様な視点を持つ人々による、言語を介したコミュニケーションを通じて明らかになる。」

         

   

しかし筆者は「今日の日本では話し合いによる政治は行われていない。むしろ、男性による支配が行われているのではないか」との問題意識から、「女性が自らの意見を言うことを妨げるジェンダー規範」にまで切り込んでいく。

   

そして、男性が女性に対して一方的に自らの意見を説明する「マンスプレイニング」、男性が女性の発言を遮って自分の話を始める「マンタラプション」、男性が女性の発言を横取りする「ブロプロリエイション」の3つの現象についての分析を紹介している。「話合い」という「民主主義」の基本自体が、実は、ジェンダー規範によって、すでに脅かされているのだ。

   

ほかにも、筆者は、ジェンダーの視点に基づく研究成果を紹介しながら、「政治における権力」「政治の争点」「代表とは何か」「政策の変化はどのようにして生じるか」など、政治学の課題を次々に論じていく。

   

そして筆者は、本書の「おわりに」で次のように述べている。

   

「ジェンダーの視点から眺めることで、世界の見え方がこれほど変わるのならば、そのことを最初から知っておきたかった。自由主義やマルクス主義があらゆる政治現象を説明する道具立てを備えているのと同じように、フェミニズムもあらゆる政治現象を説明する論理を持っているということを知っておきたかった。だからこそ、これから政治学を学び始める人には、そのことを早い段階で知っておいてもらいたい。本書は、このような動機から執筆されている。」

   

今の日本の政治状況を憂うすべての方に、お勧めの一冊である。

   

弁護士 宮地光子

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