リレーエッセイNo.32                       「AV出演を強要された女性たちの声を聴く」                       -ポルノ被害と性暴力を考える会(PAPS)                      フリーソーシャルワーカー みやもと せつこ-

2017.07.26

現代の日本社会では、女性や子ども(男性を含む)が性的な見世物として、一方的にポルノという形で消費されている。ポルノ被害と性暴力を考える会では、ポルノグラフィー(AVを含む)の中には、表現の自由の問題ではなく、個人の性的ファンタジーを満たすものでもなく、その制作現場には生身の女性(男性も子どもも)が被写体となって現に性暴力を受けている場合があることを相談事例を通じて知った。性暴力を振るわれた結果“制作”された“商品”が消費されている社会に私たちは住んでいる。

2013年、私たちのホームページ(https://paps-jp.org/)に1通のメールが届いた。

「AVに出演することが決まっている。どうしても出演したくない。出演しないためには多額の違約金がかかる。そんなお金ありません。どうか助けて。」

この1通のメールから始まって5年経ち、AV等の相談の累積件数は370件を超える。AVの被写体になっている人は年間数千人といわれ、潜在的には数千人、数万人の相談希望者がいることだろう。相談依頼者は現在進行形の人ばかりでなく、5年前、10年前の出演の傷を現在に引きずっている人もいるのだ。心理的なトラウマばかりでなく、過去の映像が今もネット上に流されている。過去の被害に現在の生活を規定されて苦しんでいる人がいるのだ。

相談を寄せる人の一番の願いは、自分自身の性交行為が撮影されているDVDや動画の発売停止や販売停止、あるいはネット上に流通している動画や画像の削除である。未成年の相談依頼者の場合は民法第5条に抵触するので、委任状を取って団体が直接交渉することもある。社会問題化し行政も動きだしていることからかなりの確率で業者が応じるようになってきた。もちろん、私たちは弁護士ではないので相談依頼者からは相談料はもらっておらず、無料だ。

私たちの交渉では手に負えないと判断し、相談依頼者が希望する場合には弁護士につなぐ。弁護士につないだおおよその件数は100余件ほどになる。

私たちにとっては相談依頼者の間に立って弁護士とどのように連携するかが大きな課題となる。

AV問題やAV業界に詳しい弁護士(残念ながらとても少ない)を紹介して、その弁護士さんに相談してね、というやり方では法律の俎上に上らないのだ。多くの相談依頼者は、自分で解決できなかったから私たちのところへ相談に来るのであって、その相談内容もきちんと整理されているわけではなく、解決してほしい課題、かかわりを持った人々、プロダクションやメーカーは錯綜しており、一度聞いただけではなかなか理解し難いのが大半だ。

5W1Hを中心にして時系列的に何が起きたのかを丁寧に聴き取り、整理する。慎重に非審判的に聴き取ることによって、本人自身の気持ちもだんだんに整理されていき、自分のしたいこと、自力ではできないがしてほしいことが明確になっていく。このようにして整理した記録を本人にみてもらい、間違いの修正、書き足りないことの加筆などを経て、本人の了解のもとに記録を弁護士に送り、法律相談を依頼する手順をとる。法律相談のための訪問にも同行する。

私たちの経験によれば、相談依頼者がこれから乗り越えなければならない法律の枠組みを理解するのはとても困難なことで、言わば通訳を必要とするのだ。相談依頼者が弁護士の言っていることを正確に理解しているかどうかを観察し、適宜、かみ砕いて説明し、最終的には本人の納得の上で、取るべき法律的手段を選んでいく手助けをするのである。

AVに関わる相談は始まったばかりだ。相談依頼者たちはAVに関わるプロセスで何らかの形で自分の意思と行動が関与していることを自覚しているので、従来は相談できることではないとの認識があった。しかしここ数年でAV問題が社会問題として浮上することで、自分のこの困った事態は人に相談してもいいことなのだという認識が醸成されて、重い口が開かれた。

弁護士も支援者も相談依頼者に学びながら方法を模索している最中である。したがってこの問題に向き合うためには弁護士、支援者、相談依頼者の協働作業が必要なのだ。

私たちの組織に370件余の相談が集積しているということは、結果としてAV業界やAV問題に関する情報センター的な役割も担わざるを得ない立ち位置にいるということである。従来の弁護士の守秘義務の枠を超えて、依頼者の同意のもとにという前提の上ではあるが、個別の事例に関して弁護士と支援者との情報の共有は重要なことと思われる。

筆者の著作    『AV出演を強要された彼女たち』   (ちくま新書、800円+税)

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