「セクハラ罪」っていう罪はない?  【弁護士 雪田樹理】

2018.08.30

記者アンケートに見る深刻な被害状況

今年4月、当時の財務省福田事務次官による女性記者に対する取材時のセクシュアル・ハラスメントが週刊誌の報道で明らかになり、後に事務次官が「職務を続けるのが困難」という理由で辞任するという出来事がありました。財務省は、その後、セクハラの事実を認定しましたが、当初は、セクハラ調査のために被害者に名乗り出るよう求めるなど、エリートの官僚組織がセクシュアル・ハラスメントに関する基本的理解すら持ち合わせていないことで、社会的な批判を浴びました。

また、この事件を受けて、性暴力の被害者と報道関係者らでつくる「性暴力と報道対話の会」が行った緊急アンケートでは、アンケートに応じた記者(女性103人、男性4人)の96%が被害を受けた経験があると答えており、「性的な冗談やからかい」61人、「抱きつかれた」49人、「性的関係を強要されそうになった」39人、「性的な関係を無理やり持たされた」8人と深刻な被害状況が明らかになっています。そして、過半数の人は、相談すらせずにやり過ごすほかなかったという現状もわかってきました。

 

自ら後進性を宣言したもの

ところで、前事務次官のセクハラ問題に関する麻生太郎財務大臣の発言は、レッドカードのオンパレードでした。「(セクハラが嫌なら)次官担当を男性記者に代えればいい」と言ったり、「被害者は名乗り出にくい」と記者に指摘されると「福田の人権はなしってわけですか」と加害者を擁護する発言をしたり、福田前事務次官の辞任を承認した時でさえ「はめられて訴えられているんじゃないかとか、ご意見はいっぱいある」と被害者を中傷する発言をしました。

なかでも、麻生大臣による「セクハラ罪っていう罪はない」とする発言は、セクハラを軽視する発言として強い批判を浴びましたが、政府は5月18日、正式に「現行法令において『セクハラ罪』という罪は存在しない」とする閣議決定をしました。セクハラ罪という罪はないのでしょうか。

麻生大臣の発言が、セクハラを根絶すべき財務省トップの発言として論外であることは言うまでもありませんが、「セクハラ罪」という罪はないという発言は正しいといえます。セクシュアル・ハラスメントの具体的な態様として、刑法の「強制わいせつ罪」や「強制性交等罪(旧強かん罪)」に該当する行為が行われた場合には、それらの犯罪になりますが、「セクハラ罪」という犯罪は、現在の日本にはありません。

諸外国では、セクシュアル・ハラスメントを一つの犯罪類型として処罰の対象としている国もあり(例えば、韓国は雇用関係にある場合の性犯罪の類型をおいています)、日本は国連の女性差別撤廃委員会から、「職場でのセクシュアル・ハラスメントを抑止するため、禁止規定と適切な制裁措置を盛り込んだ法整備を行うこと」という勧告を受けています。また、ILOは、この6月、2019年の条約成立を目指して、職場における暴力とハラスメントに関する国際基準を設定することを決めました。

国際的な水準や動向からすると、日本に「セクハラ罪」がないことは是正されるべき課題であり、麻生発言や閣議決定は、自ら日本の後進性を宣言したものといえます。

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