パワーハラスメントへの対応は国際水準で  【弁護士 角崎恭子】

2020.02.18

2012年、「提言」の定義と典型例

 ハラスメントと聞くと、セクシュアルハラスメント、パワーハラスメント、マタニティハラスメント、モラルハラスメント等々、様々な言葉が思い浮かぶ。「セクハラという犯罪はない。」という大臣の発言が物議をかもしたが、例えば、セクシュアルハラスメントが、強制わいせつや強制性交等に該当すれば犯罪になり、パワーハラスメントが、暴行や強要に該当しても同様である。

 労働の場では、どのハラスメントに当たるかではなく、労働者の就労環境が害されることが問題であり、事業主は、いかなる義務が課せられているのか理解した上で、対策を取る必要がある。セクシュアルハラスメントは男女雇用機会均等法に定めがあり、マタニティハラスメントも男女雇用機会均等法や育児介護休業法に定めがある。
パワーハラスメントについては、2012年に、「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」が発表され、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」と定義された。

 典型例として、①身体的な攻撃(暴行・傷害等)、②精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言等)、③人間関係からの切り離し(隔離・仲間外れ・無視等)、④過大な要求(業務上明らかに不要なこと・遂行不可能なことの強制・仕事の妨害等)、⑤過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じること・仕事を与えないこと等)、⑥個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること等)が挙げられた。

2019年、罰則のない「パワハラ防止法」

 そして、2019年に、労働施策総合推進法が改正され、パワーハラスメントについて初めて法律による規定がなされた。「パワハラ防止法」と呼ばれるのはこの法律である。大企業には、2020年4月から、「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない」ことが義務付けられた(30条の2第1項)。また、事業主は、労働者が上記の「相談を行ったこと又は企業による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他の不利益な取扱いをしてはならない」(30条の2第2項)。

 事業主への罰則はないため、実効性への疑問もあるが、義務に違反すれば、厚生労働大臣は、事業主に対して、助言・指導・勧告をすることができ、事業主が勧告に従わない場合には、公表することができる(33条2項)。また、明らかな義務への違反は、安全配慮義務違反(債務不履行責任)等の根拠となり得ると考えられる。
2019年には、ILO総会で、あらゆる形態のハラスメントを包括的に禁止する内容の条約が採択されたが、批准国には、暴力やハラスメントを法律で禁じることが義務付けられ、被害者を救済する措置が求められている。事業者にも、被害防止のために職場で適切な措置を取ることや内部通報者への報復の防止策をおくことが求められ、必要に応じて制裁(罰則)を設けるべきことが規定されている。
パワハラ防止法には、罰則が定められておらず、現状のままでは、日本は、ILO条約を批准することができないため、国際的な水準でのパワーハラスメントへの対応が急務である。

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