給付金で世帯単位制を考えた  【弁護士 角崎恭子】

2020.08.19

給付金で問題となった世帯単位

 

新型コロナウイルスに関して、政府から、1人当たり10万円の定額給付金の給付が決まったが、この給付金の受給者が「世帯主」と定められたことで、大きな波紋を呼んだ。DV被害に遭い、住民票を配偶者との住所においたままで逃げている被害者やその同伴者(子ら)、虐待被害に遭い、住民票を親元においたまま動かすことのできない被害者等、より困窮し、給付金を必要とする人々が受給できないのではないかと懸念されたためである。

その後、極めて短期間での手続きが要求されはしたが、幸い、住民票を異動できない事情のある方が、実際の住所地で給付金を受給するための手続きが定められた。給付金に関する事務処理量を減らす必要があったのかもしれないが、世帯主だけに受給権があり、原則として世帯主名義の金融機関の口座に世帯全員分の給付金を振り込むという方法には、私は強い違和感を覚えた。

 

世帯とは何か

 

そもそも、世帯とは何なのか。厚生労働省によれば、世帯とは「住居及び生計を共にする者の集まり又は独立して住居を維持し、若しくは独立して生計を営む単身者」のことを言い、世帯主とは「年齢や所得にかかわらず、世帯の中心となって物事をとりはかる者として世帯側から報告された者」を言うと定義されている。

世帯は、リレーエッセイで下夷教授が書いておられる戸籍とは一切連動していない。生活の本拠を共にしていれば、家族でなくとも同一の世帯として届け出ることが可能であるし、兄弟姉妹等で同居していても、それぞれが独立した生計を営んでいれば、同一の住所で、別世帯として届け出ることもできる。1人暮らしを始める際に、親元から住民票を異動して単身世帯となれば、当然に世帯主となり、結婚して2人で住居を構える際等には、誰を世帯主にするか当事者で決めて異動届を提出する。

 

世帯主はどのように決めるのか

 

世帯主を誰にするかということは自由に決めてよいが、役所の窓口で相談すると、「収入の多い方にしては」と言われることが多いのではないだろうか。大阪市のサイトでは、Q&Aのコーナーの「Q:世帯主とは何ですか。」という質問の回答には、「A:世帯を構成する者のうちで、主として生計を維持する者であって、その世帯を代表する者として、社会通念上妥当と認められる者のことを言います。」と記載されている。夫婦で収入が多い方と言われれば、通常は男性になるであろう。

では、世帯主であるか否かということは、実生活にどのように影響するのか。例えば、従業員に住宅手当や家族手当等を支払う規定に、世帯主に限るという限定のある企業は多い。また、国民健康保険料は、世帯主に納付義務があり、納付通知も世帯主宛てに届く。世帯主が会社員で社会保険に加入し、配偶者が自営業者の場合も、世帯主に対し、配偶者分の国民健康保険料が請求されるのである。児童手当も、受給権者の判断要素の1つに、世帯主が誰かということがあげられる。生活保護も、世帯を単位として判断される。

 

世帯主は男性なの?

 

過去には、届出時に、男性がいる世帯で、女性を世帯主として届けようとすると、間違いだと指摘されたり、訂正を求められたりすることがあった。現在でも、女性を世帯主として届出ようとすると、窓口で、「ご夫婦の場合は、通常、男性が世帯主ですよ。」等と言われることがあると聞く。

男性と女性の平均賃金に大きな格差があり、結婚や出産を機に退職したり働き方を変えたりせざるを得ない女性が多く存在する現状で、収入を基準に考えれば、世帯主の多くは男性になる。

しかし、本当に世帯という単位をおく必要があるのか。収入の多い者を世帯の代表とすることは合理的なのか。少なくとも福祉や健康、安全にかかわる事柄については個人単位にすべきではないか。世帯単位について、さまざまな疑問を感じた定額給付金であった。

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