性犯罪の根絶へ、一歩でも近づく年に  【弁護士 有村とく子】

2021.01.28

成果をあげている痴漢防止の活動

 

当事務所2018年ニュースレター冬号のリレーエッセイに寄稿してくださった松永弥生さんは、一般社団法人痴漢防止活動センター代表理事をされていて、「社会の意識を変えれば、電車内の痴漢はいなくなる」と信じ、女子高校生らが痴漢被害に遭うのを防ぐことを目的とした「痴漢防止バッジ」の普及活動を2015年から進めてこられました。バッジには、「痴漢は犯罪です。私は泣き寝入りしません。」などの言葉が書かれており、地下鉄の駅の売店でも売られています。学生からデザインを募り、毎年「痴漢防止バッジデザインコンテスト」が開催され、審査には中高生が参加しています。2020年は文部科学省と国土交通省が後援することになったそうです。地道な活動の成果だと思います。

そう、痴漢を含め性犯罪も人権侵害であり、きっぱりとNO!の意思表示をすることが大切です。なんとこのバッジ、利用者の9割を超える人が効果を感じたという調査結果が出ているそうです。

電車内で痴漢に遭ったことがないと言う人は、特に女性は、むしろまれではないでしょうか。高校、大学と電車通学だった私も、車内で被害に遭った経験があります。けれど当時は気持ち悪くても、怖くて、とっさに「やめてください!」という声を出せず、急いでその場を離れるのが精一杯でした。そして、毅然と抗議できなかった自分がみじめで情けなく、悔しい思いをしてきました。今なら、痴漢してくる奴を睨みつけ、その手を掴んで離さず、大声で「ここに痴漢がいます!現行犯なので刑事訴訟法213条にもとづく私人逮捕をします。」と言って次の駅で警察官に引き渡せる自信がありますが、そうやって強くなった自分に痴漢は寄ってきません。

 

痴漢の加害者はどんな男性?

 

先日、弁護士会の研修で『男が痴漢になる理由』(イースト・プレス、2017年)の著者である斎藤章佳さん(精神保健福祉士・社会福祉士)のお話を聞きました。性犯罪者のほとんどは、ごく普通の男性(家族のためにまじめに仕事をし、家庭を営み、社会生活を送っている人たち)で、とくに日本で最も多い性犯罪である痴漢の加害者は、両親から愛情を受けて何不自由なく育ち、4年制大学を卒業し、結婚して子どももいる男性が全体の過半数を占めているとのことでした。また、性犯罪は、性的欲求や衝動にのみによるものでなく、支配や優越、強さの主張といったさまざまな欲求から行われ、その欲求を満たすため合目的的に、計画的に行われる、非常に習癖性の高い行動であると。制服を着ているほうが私服を着ているときよりも痴漢に遭う比率が高いというのも、制服が従順であることの象徴であると加害者が認識していることの現れだということでした。なるほど。だから、痴漢防止バッジを付けることによって、加害者に「私は痴漢されたら黙ってへんからな!」のメッセージが届き、被害を未然に防ぐことにつながるのでしょう。

さらに、多くの性犯罪者には、被害者が怖くてフリーズしていたにも関わらず性的な行為を望んでいたと認識する認知の歪み、「女なら男の性欲を受け入れて当然である」という加害者に都合の良い価値観としての認知の歪みが存在している、この認知の歪みは、日本社会にある「男尊女卑的価値観」と相補的に連動しており、加害者が勝手に作り出したものではない、日本社会に根強い性別役割意識や男尊女卑的価値観が変わらなければ性犯罪はなくならない、目の前にいる加害者は日本社会の縮図である、と鋭い指摘がされていました。

 

草の根から変えていく取り組みを進めたい

 

性犯罪の被害を防ぐ取り組みは、被害に遭った人への支援とともに、加害者に再犯をさせないための治療を含めた法制度が整備されること、個人の性的自由を尊重する人権教育を早い段階から浸透させること、これらを連動させることが重要ではないでしょうか。

松永さんは最近では、「学生に知ってほしい痴漢の真実:アニメーションプロジェクト」を立ち上げました。制作資金をクラウドファンディングで募ったところ、1カ月足らずで目標金額(150万円)を達成されています。学校教育の現場では、登校中の性犯罪やスクールセクハラの防犯教育がまだまだ不十分であることがアンケート調査結果から明らかになっています。学生の痴漢被害に対して十分な対策が行われているとは言えない実態を、いわば草の根から変えていくこのような取り組みに強く共感し、今後も応援したいと思います。

 

 

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