性犯罪の見直しに期待する  弁護士 雪田 樹理

2015.02.01

【強かん罪「暴行又は脅迫」要件が起こしている問題】

昨秋「うちわ問題」で法務大臣を辞任した松島みどり氏が、辞任直前、「物をとることより、女性の心身を傷つける行為の方が軽くみられているようでバランスを欠く」として、性犯罪の罰則のあり方を議論する有識者検討会を設置しました。有識者会議は12人、うち8人が女性で、刑事法の研究者や裁判官、検察官、弁護士などで構成され、昨年10月から議論が始まっています。

前法相の発言は、強かん罪が強盗罪よりも軽い法定刑となっていることを指したものですが、強かん罪の法定刑を重くしたとしても、性暴力事犯の根本的な解決にはなりません。

現在の性犯罪の規定は、1907年、明治時代に作られたものです。明治民法のもとでは、女性は無能力者とされ、男系世襲制がとられていました。女性は、イエを維持するための、「子を産むための道具」とされ、夫以外の男性と関係を持った場合には「姦通罪」で処罰されていました。そして、強かん罪は、家父長制を守るため、女性が夫以外の男性の子を妊娠する可能性があることから、「性的秩序」という社会的法益を守るものとして、犯罪とされていました。

そのため、女性には強い貞操義務が課され、男性の暴行や脅迫にたやすく屈するような女性は保護するに値しないとされ、被害を受けた女性には最大限の抵抗が要求されていました。女性が強い抵抗をした場合、つまり「暴行又は脅迫」をもって姦淫された場合にのみ、強かん罪が成立するとされてきたのです。

1946年に日本国憲法が制定されて男女平等となり、姦通罪は廃止されましたが、女性蔑視の強かん罪の規定は、そのまま残りました。社会的な法益ではなく、個人の性的自由を保護するための犯罪であると解釈は変わりましたが、条文には「暴行又は脅迫」という要件が残り、いまも判例は、「相手方の抵抗を著しく困難にする程度」の暴行や脅迫が認められる場合にのみ、強かん罪が成立すると解釈しています。

しかし、強い抵抗をすることが困難であることの方が、圧倒的に多いのが性暴力被害の現実です。突然の性暴力によって心理的な麻痺状態となり、強い恐怖心から抵抗できなかったり、また、顔見知りからの被害の場合には、暴行や脅迫がなくとも、加害者の地位や加害者との権力関係によって、逃れられないことが多いのです。特に近親姦の場合には、被害の認識すら持てないこともあります。

 

【性暴力の分野でのジェンダー平等が前進する年に】

女性差別の思想を受け継いだままの強かん罪の規定については、以前より見直すべきだという意見が出ており、国連からも何度も日本政府に対して見直しを求める勧告が出されてきました。2012年7月には、内閣府の男女共同参画会議の女性に対する暴力専門調査会も、強かん罪規定の見直し、非親告罪化、性交同意年齢の引上げなどについての議論をまとめています。

今回の検討会でも、議論の論点として、強盗罪との均衡の他に、強姦罪の性中立性(男性の被害者も含み性差をなくす)、肛門性交や口淫などの性交類似行為の新たな犯罪類型を作る、暴行・脅迫要件の緩和、地位や関係性を利用した行為についての犯罪類型化、性交同意年齢の引上げ(現在は暴行脅迫がなくとも犯罪が成立するのは13歳未満)、非親告罪化、年少者が被害者である場合の公訴時効の停止や撤廃などが挙げられています。

私たちの日頃の性暴力事件に対する法的支援の経験が、有識者会議の議論に生かされるようにとの思いから、昨秋来、性暴力救援センター・大阪の経験に基づいた資料や昨年、出版した『性暴力と刑事司法』を検討会に提供するなど、積極的な働きかけをしてきました。2015年は、是非、性暴力の分野でのジェンダー平等が前進する年にしたいと願っています。

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