特定秘密保護法に貫かれる支配の論理 弁護士 乘井 弥生

2014.01.20

【「その秘密、ヒミツかどうかもまた秘密」】

普段は選挙のときに投票に行くぐらいしか政治への関わりのない私であるが、この法律はひどいと思い、昨年12月、大阪弁護士会主催のデモに参加した。弁護士だけでなく、ジャーナリスト、学者、そして多くの国民が反対の声を上げたが、安倍政権は数の力にもの言わせ、特定秘密保護法を成立させた。

特定秘密保護法とはどういうものか。この法律は、

1,防衛、外交、スパイ防止、テロ防止の4分野について、

2,行政機関の長が「特定秘密」を指定し、

3,「特定秘密」に指定されると、提供・提示が厳格に制限され、

4,「適正評価」を受けた者しか取り扱うことができず、

5,漏洩や情報の取得活動に対して重い刑罰が科せられる

という内容である。

政治の世界に厳重に管理されなければならない情報があることは良くわかる。けれども、それは国民の知る権利と整合するよう、情報の適正な管理という観点から十分議論され扱われなければならない。しかし、秘密保護法にはそのような視点がない。大臣が「これを秘密にする」と決めれば「特定秘密」に指定され、国民の人権を害するような違法な内容の情報や、疑似秘密も、法の下に隠されてしまう。まさに、「その秘密、ヒミツかどうかもまた秘密」といった恣意的内容でチエックの仕組みもない。

また、この法律は、秘密を漏らす側だけではなく、知ろうとする行為さえ厳罰を科すことを定めている。防衛や外交に関わる公務員がその職務に由来した義務を負うのは当然である。しかし、国民の知る権利、表現の自由は民主国家の基本であって、主権者が主体的な判断をするためには、情報操作されたものではない、より広い正確な情報が不可欠である。

さらにこの法律は、秘密取扱者の「適正評価」の名の下に本人のみならず、配偶者、父母、子、兄弟姉妹、配偶者の父母、さらには同居人に至るまで、犯罪歴、精神疾患、経済状態などの身辺調査を許す内容を含んでいる。国民に対する深刻なプライバシー侵害のおそれが大きい。こんな危ない法律を、ろくな議論もせずに通すなんて、安倍政権は主権者である国民を馬鹿にしているとしかいいようがない。「お前ら国民は、黙ってついてくればいいんや!」と言われているのと同じである。

 

【「つべこべ言わず、ついてこい!」?】

と、ここまで書いて、ふと思った。

これって、DV夫の支配の論理と似ていませんか?

DV夫は妻に必要な情報を与えたがらない。夫に給料明細を見せてもらったことがないという妻は多いし、妻が家計の全体像を聞いてもうるさがって拒絶する。そのくせ、何か口を挟むと「何も知らんくせに」と見下す。

DV夫は自分の行動や自分が隠したいことについては「知る必要がない」と制限する一方で、妻の行動、情報は細部に至るまで把握できて当然と考える。自分か深夜に帰宅しても「大事な仕事のつきあい」の一言ですませるが、妻の交友関係、はては妻が日中何をしたかまで問いただす。そして、それに答えないと不誠実だ、裏切りだとなじるのが常である。

そんな家庭では何か起きるか。夫は暴君と化し、家族の日常を支配する。家族は知るべきことを知らされないから自信をもって自分の意見も言えない。何を聞いていいのか、何を目にしていいのか、その基準もDV夫が決めるから、怒りの地雷を踏まないために顔色をうかがう生活を強いられる。家族の人権は少しずつ蝕まれていく。

やっぱり似ている。根っこにあるのは、「俺(家の長、為政者)がお前らのいいようにする。つべこべ言わず、ついてこい!」なのである。ああ怖い!

時の政府によって情報が操作され、あれよあれよという間に戦争が始まり、知らぬ間に戦争に加担させられていた、などということにならないよう、今、しっかりとこの法律の廃止を求めて、主権者として意見表明をしなければと思う。

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