取調べの可視化  弁護士 髙坂 明奈

2014.01.20

【期待を裏切った基本構想】

「特定秘密保護法」が昨年12月6日に成立しました。国民が注目していない中で法案が出され、国民に十分説明がされず、世論を無視し、強行に成立されました。取調べの可視化の問題も世論を無視した方向に進んでいるようです。取調べの可視化については、2001年に司法制度改革審議会意見書が提出され、これまで議論が重ねられてきました。2007年〜2011年にかけては、志布志事件、足利事件、布川事件など無罪事件が相次ぎ、特に厚生労働省の元局長村木厚子さんの無罪(冤罪)事件では、検察官が証拠の改ざんを行っていたことが明らかになり、世間に大きな衝撃を与えました。

そして、密室での執拗な取り調べによる冤罪を防ぐために取調べの可視化の必要性を求める声が高まり、2011年6月、法務省の法制審議会に新時代の刑事司法制度特別部会が出来ました。この部会の委員には、冤罪事件の当事者である村木厚子さんや痴漢冤罪を扱った映画「それでも僕はやっていない」の監督の周防正行さんが入っており、自白偏重の捜査・公判への改革が期待されました。

しかし、昨年1月に提出された刑事司法制度の基本構想では、取調べの録音・録画制度について、①一定の例外事由を定めつつ、原則として、被疑者取調べの全過程について録音・録画を義務付けるという案(対象事件は裁判員対象事件の身柄事件を念頭において、その後具体的な検討を行う)と②録音・録画の対象とする範囲は取調官の一定の裁量に委ねるものとする案が出されました。②は、捜査官の裁量を許すのであれば、恣意的な運用がなされる可能性があり、冤罪の撲滅にはならず、話にならないと思います。また、①の案では、裁判員対象事件を念頭に置くのであれば、村木さんのケースが含まれませんし、さらに「一定の例外事由」として、記録をした場合に関係者の心情、名誉、利益等が著しく害されるおそれがあると認めるとき、捜査に著しい支障が生じるおそれがあると認めるときなど、広い例外事由を定めることが議論されています。これでは、捜査官の裁量を認めているのと何ら変わりはありません。

【監視の目を緩めず、動向に注目を】

昨年11月2目、大阪弁護士会で開催された「いよいよ法制化!可視化立法の行方〜周防正行監督と考える取り調べの可視化〜」というシンポに出席し、当事務所の乘井弁護士と私自身も弁護人となっている東住吉放火冤罪事件について報告をしてきました。東住吉事件でも切違え取調べや長時間の取り調べの中、虚偽の自白調書が取られたという経緯があります。

また、シンポでは、看護師の爪きりが虐待か正当な業務行為かが争われ、控訴審で逆転無罪となった北九州の爪ケア事件、ガールズバーの店長が転落死したことが事故なのか殺人なのかが争われ、殺人未遂罪で逮捕・勾留されたものの不起訴となった大阪のガールズバー事件などが報告されました。いずれも、警察で厳しい取調べがなされていたとのことでした。ガールズバーの事件では、検察庁で取調べが録画されており、そこでは厳しい取調べがなされなかったことも報告がありました。

シンポで周防監督が話された特別部会でのやり取りが印象的でした。冤罪被害者の村木さんがいる前で、他の委員が今までの取り調べの在り方が正しかったと平気で話をする、可視化をすれば、これまでの取調べ手法が変わってしまうという話が出ているということでした。取調べの手法を変えるための可視化なのにこのような話が出ているとは呆れ果ててしまいます。国民が監視の目を緩めると想像していなかったような方向に議論が進んでいるようです。今一度、可視化問題に目を向け、国民もメディアも注意をして動向を見て行かなければならないと思います。

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