川島織物セルコン男女賃金差別訴訟 弁護士 宮地 光子

2012.01.30

【入社16年でも入社1~2年の男性の給与】

「わが社に女の営業職はいない?一古典的な男女差別に怒りの提訴!」とのタイトルで、事務所ニュースNo.17(2010年1月発行)に紹介させていただきました「川島織物セルコン男女賃金差別訴訟」が、昨年10月末に、会社より解決金450万円の支払を受け、和解解決致しましたので、経過を簡単にご報告させていただきます。

原告の松田安希子さんは、1990年12月に(株)スペースエイジに入社。入社数ヶ月後から、営業に従事し、社内でただ一人の女性の営業職として、男性の営業職と同等の職務に就いてきました。

同社は、その後親会社である㈱川島織物セルコンとの合併を2008年10月に予定して、2007年8月頃から、人事制度の見直しに着手しましたが、この見直しのなかで、松田さんは、自分の給与の等級ランクが、男性であれば、入社1~2年の社員に適用されるものであったことに初めて気づきます。

思い余って人事部長にかけあうも、「総合職と地域限定に分かれていて、女性の場合は地域限定職。わが社に女性の営業職はいない」と言われる始末。松田さんがそんな会社に見切りをつけ、退職して提訴に踏み切ったのが、2009年11月のことでした(訴訟は、当職と当事務所の髙坂弁護士が担当しました)。

以来2年近く、訴訟は、書面のやりとりが続いていました。その中で、会社は、原告の松田さんと男性営業職とは業務内容が異なるということをしきりに強調していました。扱う商材が違うとか、男性は、大型商業施設に対する責任施工取引を担当していたが、松田さんはそのような取引を担当していないなどという理由です。

しかしいずれの理由も、会社の男女異なる取扱いを、さらに浮き彫りにするものではあっても、松田さんへの賃金差別を合理化するものではありませんでした。さらに会社は、松田さんが主任にすら昇任しなかった理由を、松田さんの年間の考課査定が、C上を超えたことがないからだと説明していましたが、訴訟の中で会社が明らかにしてきた人事考課関係の証拠によれば、松田さんの比較対象の男性は、年間査定がC上でも主任に昇任していることが明らかになりました。

 

【証拠調べを待たずに勝ち取った勝利和解】

このような訴訟の進行のなかで、書面のやりとりもほぼ完了し、後は、証拠調べを残すのみの段階になって、裁判所から和解の勧告がありました。

裁判所は、男女差別が存在したことを前提に和解協議を進行させましたが、原告側にとって困難な課題がひとつありました。

それは松田さんが入社した当時の(株)スペースエイジが、社員が十数人の小さな会社で、その後、他社との合併で全体の規模は大きくなったもの、松田さんと社歴が同じで、年齢・勤続年数がほぼ等しい男性社員というと、たった1名に絞り込まれてしまい、いわゆる男女差別の大量観察ができないという一点でした。

このたった1名の男性との過去10年間の差額賃金の総額は、約800万円でしたので、和解解決の水準は、この約半分を支払わせたということになります。

もっと払わせたかったという気もしますが、比較対象者が1名しかおらず、男女の賃金についての大量観察ができないという点や、判決になれば時効という問題も出てくるという点を考慮すれば、勝利和解と評価できるものと思います。

証拠調べを待たずに和解解決に至ったのも、これまでに取り組まれた数々の男女賃金差別事件において、裁判例や和解例が積み重ねられてきた歴史があったからだと思います。

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