性犯罪の適切な捜査を目指して 弁護士 雪田 樹理

2012.01.30

【韓国を視察して】

昨年4月、大阪弁護士会の人権擁護委員会性暴力被害検討プロジェクトチームで、性暴力に関する立法が次々となされている韓国の視察に行きました。

韓国では、民間団体が1991年に初めで性暴力相談所を設置し、現在では全国で170か所に広がっています(国の補助金が一部出ている)。また、国が100%の活動資金を出す被害者のための保護施設(シェルター)が19か所あり、民間が運営しています。

日本では、DV防止法で、配偶者暴力相談支援センターが設置され、夫婦間のDV被害者はある程度保護を受けられるようになりましたが、性暴力被害者のための相談窓口や施設は制度化されていません。また、性犯罪の捜査に関しても、日本の制度は格段に遅れており、被害者に大きな負担が課せられ、加害者が処罰されにくい仕組みになっています。

 

【被害者の負担が大きい日本の現状】

性犯罪の多くは親告罪とされており、被害者は告訴によって捜査が始まります。このことが被害者にとっては大きな精神的負担です(報復のおそれ、加害者の家族への配慮、事情聴取への不安、加害者からの示談の材料とされるなど)。

告訴をした場合、被害者には警察での長時間の、かつ数日間にも及ぶ事情聴取が待っています。そして、事情聴取では、被害事実ばかりではなく、成育歴や友人関係、過去の男性関係についてまで、根掘り葉掘り聞かれることが、現在でもまだ行われています。例えば、携帯電話の履歴を調べられ、行きつけの飲食店からのお誘いのメールまでもが、日ごろの被害者の行動にも問題があると責められたりもします。警察でも、性犯罪捜査に関する特別の努力を始めているようですが、残念ながら、現状では、「二次被害は受けるもの」という覚悟がなければ、刑事告訴に踏み切れません。

警察の捜査が終わると、次は検察庁での事情聴取です。そこでも同じ内容のことを質問され、調書が作成されます。警察と検察でのすべての捜査が終了した後に、起訴されるかどうかが決められますが、性犯罪の不起訴率は36%という統計があります(強盗は14%)。苦労して長時間の事情聴取を受けても、不起訴になることも少なくありません。裁判になった後も、被告人が犯行を否認したり、犯行態様の一部を争っている場合には、被害者は証人として法廷で証言しなければなりません。警察や検察での長時間の事情聴取に耐えて作成された供述調書は、日の目を見ることなく、法廷で繰り返し、話さなければなりません。

 

【捜査段階での証言をビデオ録画する】

このような被害者の供述の負担を軽減するため、近年、諸外国では、捜査段階での証言をビデオ録画する方法での証拠制度が採用されています。韓国では「陳述録画制度」と呼ばれ、「被害者が16歳未満あるいは身体的・精神的な障害によって事物を判断あるいは意思を決定する能力が不十分な場合」には、陳述や事情聴取過程を録画しなければならず、16歳以上の者も希望すれば、陳述録画制度を利用できることになっています。16歳未満等の場合には、事情聴取に信頼関係のある人(両親、兄弟姉妹、親戚、学校の先生など)が立ち合い、立ち合った人が法廷で「話したとおりに録画された」ことを証言すれば、その映像が証拠として認められます。被告人が録画された証言の信用性を争う場合には、被害者が法廷で証言することになりますが、そのようなケースは少ないそうです。

韓国では、被害者のための相談・医療・法律・心理治療・捜査支援を24時間体制で行うワンストップ支援センターが、全国17か所、病院の中に設置されています。そこで、医師による証拠採取のほか、陳述録画が行われています。また、警察や検察には、性犯罪捜査を専門的に担当する部署が設けられ、裁判所にも性犯罪の専門部が設置されるなど、性犯罪に関する取組みが進んでいます。

韓国調査を終えた私たちは、日本でも、性犯罪被害者の負担が少しでも軽減されるよう、昨年10月28日、韓国の刑事法学者を招いて、陳述録画制度に関するシンポジウムを開催しました。私たちの問題提起や取組みが、日本での法制度改革として結実する日が来ることを願い、2012年を迎えています。

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