「君が代」斉唱・起立の強制は、ファシズムへの道 弁護士 有村 とく子

2011.09.20

【公務員も人であることにかわりはない】

大阪府では、去る6月3日、府内の公立学校の入学式や卒業式などで「君が代」を斉唱するときに、教職員に起立と斉唱を義務づける条例が作られました。これは、「全国初」とはいえ、決して自慢できるものではありません。この条例は、日本国憲法で保障されている個人の思想・良心の自由を奪う、ファシズムに通じかねない、とても危険な条例です。

「君が代」は、国旗及び国歌に関する法律のなかで、「国歌」と定められていますが、もともとは、戦前の明治憲法時代に天皇主権の象徴として用いられたという歴史的な経緯をもつ歌です。そのため、「君が代」を斉唱することや、斉唱時に起立することそのものが、日本国内外に大きな犠牲をもたらした侵略戦争を想起させ、程度の差はあれ、抵抗を感じる人は少なくありません。私も、娘の学校の入学式で、「君が代」斉唱の時に「ご起立ください」と言われて皆が一斉に立ち上がる光景を異様に感じ、抵抗感をもってきた一人です。

他方、とりわけスポーツの世界などでは、日本チームが優勝したときに、「日の丸」が掲げられ、「君が代」が流れることはごく当たり前で、何の抵抗も感じない、むしろ、感動を覚えるという人も多いでしょう。

私は、「君が代」を斉唱・起立することに反発を覚え、自分の思想・良心に照らして、自分はできない、しない、という人がいても、それは決しておかしなことではないと思います。けれども橋下知事は、「公務員」なら組織の命令には従うのが当然として、「君が代」斉唱時の起立を義務づけ、この義務に違反した教職員に対し、懲戒処分をもってのぞもうとしています。「公務員」とて、人であることにかわりありません。「君が代」の斉唱・起立についても、それをするかしないかは、個々人が決める自由を持っています。それは「思想・良心の自由」として憲法が保障している基本的人権のひとつです。

【「君が代」から「民が代」へ】

この条例の第1条「目的」には、「府民、とりわけ次代を担う子どもが伝統と文化を尊重し、それらを育んできた我が国と郷土を愛する意識の高揚に資するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと並びに府立学校及び府内の市町村立学校における服務規律の厳格化を図る」と書いてあります。このような目的のために、教職員に「君が代」斉唱・起立を義務づけ、また、違反した人を処罰することは必要なのでしょうか。

第2次世界大戦後、「個人の尊厳」に最高の価値を置いた日本国憲法が制定され、明治憲法時代の天皇を頂点とする君主制から国民主権へと、政治の基本原理は大きく転換されました。私たちは、民主主義や個人の尊厳、自由・平等を保障される時代に生きています。「君が代」ではなく、今は「民が代」の時代なのです。

【数の力で政治が悪い方向へいくことのないように】

今回の条例は、公立学校の先生たちに、君が代の斉唱・起立を強制するもので、「思想・良心の自由」への重大な侵害であると考えます。

こういう危険な条例が、この春の統一地方選挙で過半数を取った橋下知事率いる「大阪維新の会」の発案で、たったの2日の審議でいとも簡単に通ってしまったのです。「大阪維新の会」は、選挙のとき、こんな危ない条例を作ることなど公約には挙げていませんでした。忙しい毎日を送るうちに、どんどん自由を奪う仕組みが法律によってつくられます。それに気づかぬまま、いつしか、全員右向け右と従わされ、文句が言えなくなります。そんなことを望んで「大阪維新の会」の候補者に1票を投じた人はいないでしょう。ファシズムの時代がまたやってくるのではないかと感じます。

数の力で政治が悪い方向にいかないよう、やはり政治に関心を持ち、おかしいと思うことには反対の意思を示す、そして、次の選挙で誰に投票すべきか、しっかりと見極めたいと思います。

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