『女性に対する暴力に関する立法ハンドブック』の翻訳出版 弁護士 雪田 樹理

2011.09.20

【世界中の女性たちの闘いの経験と英知の結晶】

この夏、1年あまりかけて翻訳作業を行ってきた本の出版にようやくこぎつけました。国連の経済社会局女性の地位向上部(今年1月からUNWomenに統合)が、2009年に出版した『女性に対する暴力に関する立法ハンドブック』の翻訳と解説です。国際人権NGO「ヒューマンライツ・ナウ」の女性に対する暴力プロジェクトのメンバー4名が弁護士や研究者といった本来の仕事のかたわら、休日返上で、国際人権法の専門用語と格闘し、信山社から出版の運びとなりました(この文章を書いている時点で、8月中旬の出版予定)。

なぜ、私たちが、この本の翻訳に労力を注いだのか。それは、この本が示している国際基準は、これからの日本の立法に生かす価値があると考えたからです。

国連事務総長は2008年に、「団結しよう。女性に対する暴力を終わらせるために」というキャンペーンを始めています。その主要な目標の1つが、2015年までにすべての国が国際人権基準に則って、すべての形態の暴力に取り組み、暴力を罰する国内法を制定し、施行することです。このハンドブックは、過去20年に及ぶ多くの国での、女性に対する暴力を防止し、それに対応するための法律を制定、改正してきた経験を踏まえて、世界の専門家が集まって議論し、立法のモデル枠組を示したものです。いわば、世界中の女性たちのこれまでの闘いの経験と英知の結晶なのです。

私たちが日ごろ、法律の限界や壁にぶつかったり、裁判で困難を感じ、悔しい思いをしている事柄に関して、解決の方向性を示してくれています。

 

【女性に対する暴力を終わらせる具体的な提案を網羅】

以下、ほんの一部だけ紹介します。

  1. 法は、あらゆる形態の女性に対する暴力を犯罪化し、防止、保護、被害者のエンパワメントと支援(健康面、経済面、社会面、精神面におけるもの)に関する項目、加害者に対する適切な処罰と被害者が救済を利用できるようにする七めの項目を包含した、包括的なものでなければならない、としています。
  2. 法はジェンダーに配慮した立法でなければなりません。ジェンダーに配慮するということは、女性と男性との間の不平等だけではなく、女性と男性それぞれが求める特定のニーズを認識することです。
  3. 女性に対する暴力に関する専門の警察や検察の部門、専門の裁判所の創設を求めています。
  1. DVについて、身体的、性的、心理的、経済的暴力を含む包括的な定義を行うこと。適用される範囲も、婚姻関係にある者、事実婚関係にあるもの、同性カップル、同居していないカップルを含む親密な関係にあるか、そのような関係にあった個人、互いに家族関係にある個人、同一世帯に属している構成員に適用されるべきとしています。
  2. 性暴力についても、現行の強かん罪と強制わいせつ罪を、被害の程度に応じたより広範な性暴力の犯罪と置き換えるべきとし、強制力や暴力を用いてなされるという要件や性器の挿入を証明する要件をなくすべきである、手続きにおける被害者の二次被害を最小限にすべきである。たとえば夫婦間レイプなど、被害者と加害者との間の関係の性質にかかわらず、性暴力を犯罪化すべきである、などとしています。さらに、被害者の過去の性的経歴の不提出や、被害者の二次被害を抑制する証拠の収集や提出についても具体的に述べています。
  3. 被害者への包括的かつ総合的な支援サービスを義務づけるべきとし、24時間の無料電話相談の設置や、緊急保護等のための1万人に1か所のシェルターの設置、法的アドバイスや支援・長期的支援、専門的支援等を行う女性相談支援センターを女性5万人に1か所、レイプ・クライシスセンターを女性20万人に1か所、設置すべきとしています。
  4. 保護命令手続きのなかに子どもの監護権や面会交流の規定を含め、監護権の付与については加害者に対し不利益に推定すること、加害者が監視を受けずに面会交流を行うことについて加害者に対し不利益に推定すること、いかなる面会交流の権利も子どもの意思に反して認められることがないこと、などを規定すべきとしています。
  5. 法は、女性に対する暴力の被害者が、政府や民間の個人・団体に対して、暴力を防止し、調査し、処罰するために適切な注意を払わなかったことを理由に提訴することを認めるべきとしています。

詳しくは、是非、手に取ってみてください。国連女性差別撤廃委員会の委員として活躍されている林陽子弁護士の推薦の言葉もあります。

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