北欧(フィンランド・スウェーデン)を旅して 弁護士 有村 とく子

2010.08.30

【1 北欧の制度からヒントを得るねらい】

今年5月下旬、民主法律協会の国際交流委員会が主催した北欧視察ツアーに参加しました。日本では、労働分野の規制緩和と社会保障制度の機能不全によって、派遣労働やパート労働・有期雇用など不安定な雇用が増し、格差と貧困がますます広がっています。他方、北欧諸国では、すべての人が人間らしく働き生きることのできる社会を目指し、完全雇用を目指した教育政策や、労働者を可能な限り成長性の高い産業分野に移すことをねらった積極的労働市場政策が取られていると言われています。

日本でも、真面目に働く人が安心して生活できるように、たとえ失業しても、利用しやすく効果の高い職業教育(職業訓練)が受けられ、再就職の道が拓けるような社会になればどんなに良いでしょう。そのためにはどのような制度を作り上げていくべきなのか、少しでもヒントが得られるようにと企画されたのが、今回のスタディツアーでした。

【2 「人が資源」と教育に力を注ぐ】

事前学習を積んではいたものの、たった1度の訪問で「10を知る」ことは無理だと自覚し、まずは見知らぬ土地の空気に触れて何かを感じることができれば十分だと思って参加しました。

フィンランドでは、ヘルシンキ市内にある教育庁、労働産業事務所(就労支援センター)、高等専門職業大学の3箇所をまわり、スウェーデンでは、ストックホルム市内にあるLOというブルーカラー労働者で組織された労働組合連合、スウェーデン高等職業庁、民間企業の連合体であるスウェーデン産業連盟を訪問したほか、労働問題に関するミニ・シンポジウムヘの参加も実現しました。

①フィンランドを訪問して感じたことは、女性の社会参加が日本よりもずっと進んでいるということです。訪問先で応対される責任者はすべて女性。聞けば大統領も労働大臣も女性であり、大企業を除き、ハイポストに就く男女比率は50 : 50であるとのこと。これには、人口の少ないこの国を建設するためには男女ともに力を合わせて働く必要があったという歴史的要因と、保育システムが整備され、充実した育児休暇制度があるため女性が働きやすい環境にあるという制度的な要因があると聞きました。

また、この国では、「人が資源」であり、教育に力を注ぐ政策をとっています。仕事を失った人に対しては、その人の適性に合った職業教育・職業訓練と就労支援を行うための制度が整っています。教育は、アカデミックな教育も職業教育も無料で受けられ、失業しても、失業給付等を受けながら再就職のための勉強をすることができるのです。経済的な事情によって教育を受けることができないという事態は起きない仕組みとなっています。これは教育の機会均等を国が実質的に保障したものとして高く評価されるべきものです。

②スウェーデンでも、職業教育は重視されており、雇用につながる職業教育プログラムを開発するに際しては、労使双方が関与しているそうです。いわゆる斜陽産業から先進産業部門へ労働力をシフトさせる「構造改革」は、必ずしもマイナスイメージで捉えられておらず、輸出依存型のスウェーデンがグローバル市場で競争力をつけるためには、産業の発展を目指さなければならない、そのために労働組合は産業界と協力して教育レベルの向上を図る。そして、構造改革に直面する労働組合としては、「自分たちの労働力を安く売らない」、つまり賃金レベルを維持するために「賃金コストを抱えることの出来ない企業は、労働市場から出て行ってもらう」という強気の姿勢で臨む。LOを訪ねたときに応対された方からこの話を聞いたことがとても印象に残っています。

女性の社会参加については、フィンランドと同様、日本よりも進んでいることにかわりありませんでしたが、女性の方が概して男性よりも教育程度が高い傾向にあるにもかかわらず、男性の方が賃金の高い職に就いている実態があると聞き、男女平等への道の険しさを再認識しました。

それにしても、学ぶべき点は多くあります。産業別に組織されているためか、労働組合の組織率は7~8割と高く、労働条件の切り下げに対抗できる力を労働組合が持っているところや、民主主義が根付いているところなどは、日本でもこうあれば良いのにと思います。

スウェーデンでは、選挙制度は比例代表制が採用されており、国政選挙も政党に投票するため、日本のように小選挙区制で死に票が沢山出てしまうということはありません。国民の政治への関心が高く、選挙の際にもマスコミが多様な政治的意見を取り上げ、議論の場を提供するのだそうです。

【3 パートナーシップが基本の社会へ】

北欧諸国の福祉や施策を知り、それらを参考にして、日本における格差や貧困の問題を解消するための方途を見いだすことはできると思います。北欧の社会システムは、人と人との関係が、支配する者・支配される者の関係ではなく、互いに思いやり、支え合う関係(パートナーシップ)にあることを基本にしています。日本でも、多くの人が、そうした支え合う関係に価値を見い出すようになれば、今よりもずっと生きやすい社会になるのではないかと、旅を終えて、少し希望を持てるようになりました。

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