国立循環器病センター看護師 村上優子さんの過労死事件 弁護士 有村 とく子

2009.01.30

【第一、事案の概要】

  1. 国立循環器病センター脳神経外科病棟の看護師であった村上優子さんは、平成13年2月13日午後11時30分頃、くも膜下出血を発症しました。勤務先の同センターに救急搬送され、すぐに手術を受けましたが、翌3月10日亡くなりました。25歳の若さで、同センターでの在籍期間は3年10ヶ月でした。
  2. 遺族のご両親は、優子さんが亡くなったのは、従事していた過酷な看護労働によるものであるとして、平成14年6月以降、優子さんの過労死認定のための行政手続きや裁判手続を通して種々の活動をしてこられました。
    昨年(平成20年)1月16日、大阪地方裁判所は、優子さんがくも膜下出血発症で亡くなったのは、「公務によるもの」とする判決を出し、10月30日の大阪高等裁判所判決でも、同様の結論が出ました。

【第二、過酷な看護労働の実態】

  1. 国立循環器病センターは、厚生労働省直轄の国立病院であり、循環器病に対する先端医療をめざす医療施設です。優子さんは、同センターの脳神経外科病棟において、早出、日勤、遅出、準夜、深夜の五つの変則勤務シフトにローテーションであたっていました。
    看護師の仕事は、人の生死と直接関わり、患者の生命・身体の危険性を常に予測し回避しなければならない使命を帯びた職種です。優子さんが従事していた看護労働は、①国立循環器病センターという高度専門医療センターにおける看護労働であった、②脳外科手術後急性期の患者、麻痺や意識障害のある慢性期の患者が混在する病棟での看護業務であった、③交替制勤務の病棟での看護業務であった、という点に特徴がありました。
  1. 意外なことに、国立循環器病センターでは、タイムカードによる労働時間管理はされていませんでした。病院側が管理している「超過勤務命令簿」によれば、優子さんの1ヶ月当たりの時間外労働は、15時間から25時間程度でした。
    しかし、彼女の業務は、勤務開始前の情報収集から始まって、看護記録の作成、勤務シフト担当者間の引き継ぎ、退院・転院サマリーの作成、看護研究、プリセプター業務(新人看護師の教育指導)、看護計画の作成、病棟相談会・チーム会、係・委員会への参加など、実に様々なものがあり、超過勤務命令簿に載った時間数でこなしきれるものではありませんでした。

【第三、大阪高裁判決】

今回の大阪高裁判決では、証拠が丁寧に検討され、「職場では時間外労働が常態化していた」、くも膜下出血発症前の時間外労働は「相当長時間に及んでいた」、と判断されています。また、優子さんが従事した脳神経外科病棟での仕事は、「身体的負担及び精神的緊張の程度も相応に大きなものであることが推認」できるとされました。

そして、いわゆる過労死の認定にあたっては、「時間外労働時間のみに基づくのは相当ではない」とし、長時間労働以外の夜間勤務や不規則労働、精神的緊張を要する労働か否か、当該労働者が実際に確保できた睡眠の質などの問題も考慮されなければならないとして、時間外労働時間の量に併せて「質的な面を加味し、総合して行うことが必要である」と指摘されています。今後の過労死裁判でも先例となる重要な判断です。
今回の判決をきっかけに、医療現場の労働条件が少しでも向上していくことを願っています。

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