パキスタン・スタディツアー 弁護士 雪田 樹理

2007.07.30

【理不尽な法律のもとで運動を続けて】

この2月、アジア女性資料センターが主催したパキスタン・スタディツアーに参加して、パキスタンの女性の人権状況について学んできました。予想外に寒くて、雨にたたられた旅行でしたが、女性の識字率が低く、女性が自由に外出することさえ困難な社会状況のもとでも、高い教養と人権意識を持ち、弾圧にもめげずに闘い続ける多くの女性達に出会いました。

パキスタンの女性運動の歴史は意外にも古いものでした。英国領だった1880年代から、女性が、教育を受ける権利や参政権、所有権を求める運動を行っており、1920年代には、女性が地方の参政権を獲得していました。フランスの女性が参政権を獲得する17年も前のことだったそうです。

ところが、1977年、ズィア・ウル・ハック将軍による軍事政権が誕生してからは、一転して、「イスラム化」の名のもとで、ハドゥード法と呼ばれる女性に対する厳しい法律が制定されました。ハドゥード法は、「姦通」(婚外交渉、婚前交渉)、レイプ、売春、窃盗、飲酒、虚偽の告訴を犯罪とし、鞭打ちや石打ちに死刑といった厳罰を定めました。しかも、犯罪の立証のためには、4人のイスラム教徒の成人男性の証言が必要であると定められたのです。そのため、レイプ被害にあった女性は、4人の目撃証言がない限り、逆に婚姻外交渉を犯した犯罪者として処罰されることになったのです。

しかも、無罪が証明されるまでの間、被告人は有罪として扱われ投獄されます。つい最近まで、何千人もの女性達が逮捕・拘留されていました。女性の自由な選択による結婚が許されない社会のもとで、両親が自分の選択で結婚した娘を姦通の罪で訴えたり、前夫が再婚した女性を訴えるなどした事例が多いようです。

この法律が制定された当初から、女性団体や人権団体、法律家などは廃止を訴えて運動を続けています。女性達はWomen’s Action Forumを設立し、公共の場で4人以上集まることが禁止されていた1983年に、ハドゥード法の廃止や女性の基本的人権の確立を求めて、ラホール(パキスタンの中心都市)で初めての抗議行動を行いました。そして、昨年12月、ようやく法改正が行われ、レイプ被害者が起訴されることなどはなくなりました。しかし、法律の完全廃止には至っていません。

 

【「私はアクティビスト」と語る女性弁護士に感銘】

ところで、パキスタンでは、女性が親族によって殺される名誉殺人が、2006年には565件も報告されています。毎日一人の女性が、焼き殺されているとも言われています。例えば、結婚前の女性が男性と歩いていた、という噂が立てば、その女性は「女性としての伝統的な行動規範に服従し、貞操を保つ」という家族の名誉を汚したとされ、自分の家族の手によって殺されるのです。親族の許可なく、祖父母を訪問した少女達が、親族によって殺害された事例なども報告されています。

私達が遺跡見物をした際に、ガイドが、遺跡の公園内にいた若い男女のカップルを見つけたときに、「見なかったことにしてあげてください。家族には言わないでください」と言ったことが、パキスタンの現状を物語っています。

8年前のことですが、暴力を振るう夫との離婚を決意して弁護士に依頼した女性が、法律事務所に押しかけた親族によって射殺されるという事件がありました。今回、その法律事務所を訪問したのですが、事務所の入り口には銃をもった警察官が立って警備をしていました。女性は、離婚を決意したことが家族の名誉を汚したとされ、親族によって射殺されたのです。

8年前の事件の時、親族の人質となり、監禁された女性弁護士に会いました。彼女の話では、最近では、パキスタンの女性達も、夫の暴力によって殺される前に離婚をしようと考えるようになってきているということでした。とても小柄な老齢の彼女は、執務室に南アのネルソン・マンデラのポスターを飾っていました。「私はロイヤーではない、アクティビストだ」と語った言葉、人権と正義を武器に、何事にもひるまない、凛とした弁護士の姿に出会えたことが、この旅行の一番の収穫になりました。

事務所紹介

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