「職場を変える」責任は誰に? 弁護士 宮地 光子

2003.01.20

「入社して20年もたつのに、いまだに入社したての女の子と同じ扱い、給与だけでなく、課の扱いもそうです、いつまでたっても男性社員と同じ扱いを受けられません。」

昨年の暮れ、Sさんが、会社にあてた退職届の一文である。事務機器メーカーで、男性と同じように、いや男性以上の愛社精神で仕事をこなしてきたと自負していたSさんだった。だからこそ、いつまでたっても男性社員と同じ扱いを受けられず、可愛い女の子にしか価値を見出さない会社のセクハラ体質に、とことん精神が痛めつけられた。出勤して机に座っているだけで涙があふれ、無気力になってしまった。抗欝剤の助けを得て出勤を続けたが、それも限界になった。私への彼女の相談は「会社を辞めても、裁判をすることができるでしょうか?」だった。

職場で平等に扱ってもらえない女性たちの悔しさを、弁護士になってからずっと聞きつづけてきた。そして「働きつづけてこそ、職場を変えられる」と女性たちに言い続けてきた。しかしSさんの口から語られる性差別というものの被害の深刻さを前にして、私は「働きつづけてこそ」という言葉を口にすることができなかった。

職場の中で、女性たちは性差別の被害に心身ともに深く傷ついている。その傷ついた彼女たちに、私たちは「職場を変える」という、男も簡単にはできないようなことを求めてきたのではないだろうか。「職場を変える」責任を果たしてこなかったのは、社会全体であり、そして私が身を置く司法もそのひとつではなかったか。「男女別雇用管理は憲法14条の趣旨には反するが公序良俗には反しない。均等法は過去には遡らない」とした住友電工事件判決が世論の批判を浴びたのは記憶に新しい。その批判を少しだけ考慮して、野村証券事件判決は、改正均等法が施行された平成11年以降の男女差別の違法性だけを認めた。しかし、これだけではSさんの20年は報われない。

憲法14条は、国民が、性別によって政治的・経済的・社会的関係において差別されないことを定めている。女たちが「司法改革」に求めるのは、憲法の精神を社会のすみずみにまで行き渡らせることのできる司法の実現だと思う。そんな思いを強くしている矢先、平野元裁判官のお話を聞く機会があった。男性の裁判官が育児休業をとるという、男女平等の実現を自らの家庭の中から実践しようという試みに、「司法」の世界が示した反応は、企業社会のそれと同じだった。「司法改革」は、司法の中で生きる人々の人間らしい営みを保障することでこそ、「真の司法改革」になるのだと思う。

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