ビジネスと人権 弁護士 雪田 樹理

2015.07.22

【ユニクロ中国工場の過酷な労働実態】

「安価で高品質」、ユニクロはいまや、世界中に1000店舗以上にも広がっているという。どうしたら、安くて、高品質の商品が作れるのか、疑問に思ったことはないだろうか。

昨年、香港のNGOと中国のNGOが、ユニクロにニット生地やアパレル製品を供給している、中国の2つの下請け工場に労働者として潜入し、労働環境の調査を行った。

私も理事としてかかわっている、日本の国際人権NGOヒューマンライツ・ナウも、その調査に協力し、今年1月、調査結果を公表した。ユニクロ((株)ファーストリテイリング社)は、調査報告の「ごく一部は誤解ではないかと思われる」といったものの、基本的に事実関係を認め、その後、改善に向けた対話を継続している(詳細はhttp://hrn.or.jp/)。

今回の調査によって明らかになったのは、過酷な労働実態だ。

1つは、長時間労働と低い基本給である。日本では月80時間を超える時間外労働は過労死ラインと言われているが、これらの工場の平均時間外労働は、それを大きく上回る134時間、112時間であった。また、残業代の支払いも法律に違反していた。

2つ目は、労働者の健康や安全が守られていない労働環境である。38℃という工場内の異常な高温、排水があふれるフロア、異臭を伴う有害な化学物質が使われ、換気の設備もなく、強い臭気と高温の中で、男性は上半身裸で作業するといった過酷な労働環境。作業台からの転落事故が頻発しているが、事故の防止対策はとられていない。

3つ目は、労働者を管理する多数の規則や罰金制度である。製品の品質管理・維持のために、商品の品質上の欠陥が見つかったり、編み機に汚れがあったりすると、賃金から罰金が差し引かれる。

4つ目に、労働者が意見や苦情を申し立てることができる制度がなく、また、労働者の代表といえる労働組合もない。

こんな人権無視の織物・縫製工場で作られた製品が、ユニクロの商品となって、私達消費者のもとに届いているのである。

 

【求められているのは人権に目配りした経営】

また、昨年6月、私はヒューマンライツ・ナウの取組みで、女性労働者の多い縫製工場が集中しているバングラデシュを訪問した。バングラデシュでは、2013年4月に縫製工場が入っていたビルが倒壊する事故が発生し、1100人以上の死者、250人以上の負傷者、200人近くの行方不明者を出した。事故後、製品のバイヤーである欧米のアパレル産業は、工場の安全性に関する取組みを開始したが、安全基準を満たさない工場が閉鎖されたため、失業者が生み出されるなど、労働者の権利の改善はあまりなされていなかった。

女性労働者の住居であるスラムも訪問したが、幼い子と二人で2畳ほどの部屋。木製ベッド以外の家財調度品はなく、共同の台所を利用して生活していた。早朝から夜遅くまで働き、1万円に満たない給料の半分が家賃に消え、遠く離れた田舎に住む家族との携帯電話での通話だけが唯一の外とのつながりのようであった。

有名なブランド品から、スーパー等で手軽な値段で販売されている商品まで、日本にいる私達は、彼女彼らによって製造された商品を消費している。
*     *     *

国連は、2011年に「ビジネスと人権に関する指導原則」を承認した。企業に対して、世界人権宣言や国際人権規約、ILO中核条約に規定した人権を尊重する責任を課したものである。この指導原則は、自社だけではなく、取引先、地域住民など、企業のすべての事業活動や関係性(バリューチェーン)について、人権の遵守を求めている。日本の企業も、経営リスクだけではなく、あらゆる人権に目配りした経営が求められている。

消費者である私達も、手にした商品を生み出している労働者や地域・環境を思い描き、消費について考えることが必要ではないだろうか。

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