大阪市立大学名誉教授で元ドーンセンター館長の竹中恵美子先生が今年7月1日、95歳で永眠されました。労働問題をジェンダーの視点から捉える女性労働研究の先駆者です。私は45年前、市大の学生の頃、先生の「現代の婦人問題」「婦人の賃金と福祉〜婦人解放の今日的課題」に感銘を受け、それからずっと先生のファンでした。おかっぱ頭にベレー帽を被り、いつも笑顔で学生に接する先生で、法学部生の私が経済学部の「労働経済論」ゼミを聴講したいと願い出た時も快く迎えてくださいました。まだジェンダーという言葉は使われていない時代ですが、ジェンダー論との出会いをくださった方です。先生自ら、息子さんを出産後、研究者としての生活と育児に格闘する日々だったそうで、「『細切れ時間研究者』であることのいら立ち、辛さはどうしようもなく、(細切れではない)『全日制研究者』の彼らより5年長生きして元をとろうと心をいさめた」と、若い時の悔しい思いを明るく語っておられました。そうしたご自身の体験を踏まえ、家事・育児・介護といった無償労働(アンペイドワーク)を女性に偏って担わせている社会システムの問題に理論的な光をあてて来られました。労働経済論の難しい話は私には理解が及びませんでしたが、自らが取り組む社会的課題を粘り強く取り組む先生の姿勢を、少しでも真似していきたいと思います。竹中先生、ありがとうございました。