相次ぐ不当な不起訴
2023年性犯罪の改正刑法が施行され、不同意わいせつ・不同意性交等罪の成立要件が改正され、被害者が申告しやすくなり、警察・検察の性犯罪の成否に関する判断のばらつきが減り、裁判官の有罪・無罪の判断が容易・明確になると期待されました。しかし、私が弁護士になった顧客第1号である大阪地検元検事正北川健太郎被告人による準強制性交等罪の被害者(仮称「ひかり」さん)に対する検察庁の対応は、被害者参加人(ひかりさん)及び私を含む代理人弁護士団に対し、証拠を開示しない、期日間整理手続の経過(相手方の主張・立証の概要)を説明しないなど、被害者参加制度の趣旨を没却する対応でした。その理由の説明を求めても説明しませんでした。これは、平成26年10月21日最高検察庁依命通達「犯罪被害者の権利利益の尊重について」に反しています。また、私や当事務所の他の弁護士の依頼者である性犯罪被害者の方々の事件が、私が検事なら当然起訴していた証拠があっても、次々に不起訴処分になった上、担当検事の言動が被害者心理に余りにも無理解で被害者を傷付けていることに愕然としました。例えば、職場の上司からのレイプ事案では、被害後も真面目に仕事を完遂するための事務連絡を「迎合メール」として最初から不起訴扱いされました。また、交際相手からの深刻な各種DVによる長期心理的監禁の末のレイプ事案では、警察・検察から何度も「なぜもっと早く逃げなかったのか」と聞かれて辛い思いをした末に不起訴にされました。担当検事には、聴取前に、日本フェミニストカウンセリング学会編「なぜ逃げられないのか-継続した性暴力の被害者心理と対処行動の
実態」の概要及び「なぜ」を使わない聴取方法に関する当職の論文「改正刑法の性犯罪の暴行・脅迫要件の認定と被害者の『5F反応』」を交付して参照するよう依頼したにもかかわらず、です。
アンケートの実施
ひかりさんを支援する「女性検事を支援する会」の会員である全国の複数の弁護士と事務局でZoom会議を開いた際、被害者が検事から暴言を受けて抗議しても対応が改善しなかった、某地方の弁護士会において、不当な性犯罪不起訴に対する「全件検察審査会申立キャンペーン実施中」など、この問題が大阪だけではなく全国各地で生じていると知りました。
さらに、不起訴処分を受けた性被害者に対する周囲の目が、改正前は「刑法のハードルが高すぎるから不起訴になったのだろう」とグレー扱いだったのに、改正後は「刑法が改正されたのに不起訴になるのは被害者が虚偽申告したのだろう」とブラック扱いになり、被害者が一層傷付き、職場のセクハラ事案等では泣き寝入りを強いられているとも聞きました。不当な無罪判決に対してはフラワー・デモを起こせます。しかし、不当な不起訴で心が折れた被害者は検察審査会への申立の気力もお金も時間もなく、誰にも知られず泣き寝入りすることがほとんどです。それ以前に、被害申告率も低く、被害申告が受理されない問題を被害者支援団体等で聞くことも多いです。被害者が性被害という魂の殺人とも言われる被害を受けた後、やっとの思いで刑事手続に辿り着いたとき、更に二次被害を受けている実態に焦点を当てた調査はこれまでなかったので、声なき声を拾うため、アンケート調査を実施することにしました。もちろん、良い経験をされた方からは、ベストプラクティスの参考を提供してもらいました。
法改正・法運用の改善定言
これから、回答内容につき、個人情報を一切出さない形で集計・分析し、その結果を公表し、警察、検察庁、法務省、日弁連、裁判所に対し、改正刑法の適正な施行、被害者が被害申告後に二次被害に遭わない適正な法執行を要望するとともに、処罰すべき性犯罪を適正に処罰するための更なる刑法・刑事訴訟法の改正の必要を訴え、2年後の法改正及び法運用の改善に繋げたいと考えています。