新型コロナウイルス感染症に関し、国民1人当たり一律10万円を給付するという「特別定額給付金」(仮称)の概要が、2020年4月20日に、総務省から発表されました。
総務省のウェブサイトでも、その概要を見ることができます(https://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/gyoumukanri_sonota/covid-19/kyufukin.html)。
この給付金の受給権者は、その者の属する世帯の世帯主と定められており、総務省が示した申請書の様式案では、世帯主が口座番号を記入し、1世帯分の給付対象者を申請すると、世帯主の口座に1世帯分の給付金が振り込まれることになっています。
既に、多くの新聞・ニュース等で問題点が指摘されていますが、この制度では、DVや虐待の被害者等で、世帯主(配偶者や両親等)に転居先を知られることを避けるために、住民票をもとの住所においたまま避難している多くの人々が、給付金を受給できないおそれがあります。
総務省の発表では、「基準日(2020年4月27日)において、配偶者からの暴力を理由に避難し、配偶者と生計を別にしている者及びその同伴者であって、基準日において居住している市区町村にその住民票を移していない者については、一定の要件を満たし、その旨を申し出た場合には、 当該市区町村において給付対象とする。」と記載されていますが、この「一定の要件」については、現時点では明らかにされていません。
仮に、保護命令の発令や配偶者暴力相談支援センターによる一時保護等を要件とすれば、DV被害者であっても、相当多数の方が、要件に該当しないと判断されてしまいかねませんし、総務省の概要では、DV以外の虐待等の被害者については言及されていません。
また、世帯主に対して世帯全員分の給付金を振り込むという方法では、結局は、世帯主が全額の使途を決めることになりかねず、世帯内における弱い立場の方のニーズが無視されてしまう危険もあります。
このような緊急事態への対応にしても、社会福祉に関する分野の施策にしても、「世帯」単位であることの問題点はこれまでも議論にのぼってきました。制度を「世帯」単位から「個人」単位へと変えていく必要がありますが、この機会に、それが社会の共通認識となることを願います。
弁護士 角崎恭子