東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の森喜朗前会長が、女性蔑視発言をしたことに対して国内外からの批判がやまず、とうとう辞任に追い込まれた。この問題は森氏個人の資質の問題もさることながら、ジェンダーギャップ指数が153か国中121位という低位にある日本の女性差別の社会構造を内外にわかりやすく露呈することとなった。森氏は内閣総理大臣在任当時の2000年、初の「男女共同参画基本計画」を閣議決定した人物である。日本のジェンダー平等政策がいかに無理解な政治家らによって周縁に追いやられてきたかを物語っている。
では153か国中121位という世界的に恥ずかしいレベルの日本の女性差別はどのようにして作られてきたのだろうか。そのことをわかりやすく解説してくれるのが今年1月に発売されたばかりの中村敏子著「女性差別はどう作られてきたか」(集英社新書)である。
西洋と日本の性差別をめぐる政治思想の違いを歴史的に示し、とくに江戸時代の夫婦や家族のあり方から明治民法における家父長制への政策的な転換の過程を論じている。日本では、政治や経済の分野を中心に女性差別が根強く残っており、性差別を背景にした女性に対する暴力も後を絶たない現状にある。それにもかかわらず、なぜ少なくない男性が財布のひもを妻に握られ、「家の中では女の方が強い」といわれるような現象が存在しているのか。そういった素朴な疑問も解き明かしてくれる、お勧めしたい好著である。
森氏の女性蔑視発言であぶりだされた日本の女性差別の社会構造をこの機会に考えてみませんか。
弁護士 雪田樹理