ご自身の国際結婚の経験から、国籍法の女性差別に直面し、「国際結婚を考える会」を立ち上げ、1984年に国籍法の男女平等血統主義の改正を成し遂げ、その後、1994年にフィリピン女性の仕事作りを目的に「アジア女性自立プロジェクト」を始めたもりきかずみさんが、その活動の集大成ともいえる「フィリピン移住女性と日本社会―40年のインタラクション」(明石書店)を出版した。
冒頭の「はじめに」は、1994年3月に開かれた兵庫おんなのフェスティバルの分科会「アジアの女と私たち-売買春をめぐって」から始まる。そのスピーカーは、私であった。弁護士駆け出しの時期、タイやフィリピンなどから来日した女性達の事件に出会い、「外国人」「アジア」「女性」という何重もの差別構造のもとで、陽の当たらない社会の片隅で、懸命に生きる女性達や子どもの人権侵害の現実を知り、弁護士としての活動をし始めていた若い頃の自分を思い出す。その時、私は、フィリピン女性と日本人男性の間に生まれたジャパニーズフィリピノチルドレン(JFC)の存在についても話したと記されているが、いまもまだ、日本人の父親への認知を求め、そして日本国籍の取得を希望するJFCからの依頼は絶えていない。
もりきさんは、この著書で、1980年から現在までの40年にわたるフィリピンの移住女性の動向と日本社会の変化を、自らの豊富な活動体験を盛り込みつつ、移住労働者の支援を行っているNGOの取組みや調査にも言及し、その実態をリアルに描いている。
日本社会が多様性を認める真の国際社会になるために、お勧めしたい一冊である。
弁護士 雪田樹理