20年経っても「家事は女性がするもの」?
今年のお正月休みのこと、普段は忙しくて目を留めなかった地域の公民館のかわら版の掲示をじっくり見ていて、そこに書かれている講座の名称にぎょっと驚いた。
その名称は「女子力アップ講座」。
講座の中身は「手芸」。まさに家事は女性がするものという性別役割分担を地で行く講座であった。
男女共同参画社会基本法ができて20年にもなるのに、自分の住んでいる地域の身近な公共施設がこんな差別的な講座を開いている。日本社会の現実を突き付けられた思いがした。
すぐに公民館のホームページを見て確認すると、すでに70回も講座が開催されており、講座の内容は、手芸・工芸に関するものが過半数、続いて多いのが料理に関するものであった。
これは間違いなく、家事は女性がするものという役割分担に基づいて、「女子力」をアップすることを目的とする講座であった。
気づいてしまったからには、見て見ぬふりをしてはいけない。
そう考えた私は、市が所管する公民館が開いている「女子力アップ講座」(とくに名称)は、市の男女共同参画推進条例及び男女共同参画プランに反するとして、男女共同参画等苦情処理委員会に苦情の申出を行った。
申出を行うにあたって、インターネットで調べてみると、「女子力」とは、社会一般には、「料理や掃除など家事が得意なこと」「気配りができること」「美意識が高いこと」と理解されていることがわかった。
また、朝日新聞デジタルが行った調査(2016年12月~2017年1月実施、1621回答)によると、「女子力」という言葉のイメージについて、「いいイメージ」「どちらかというといいイメージ」という答えが27.6%、「よくない」「どちらかというとよくない」という答えが51%であった。私は、以前から「女子力」という言葉は差別的な用語であると考え、好きになれずにいたが、過半数の人が、私と同じように否定的な受け止めをしていることがわかった。
「男女が等しく参加意欲をかきたてられるような名称に」
市の苦情等処理委員宛てに苦情申し出を行った2カ月後、苦情処理委員3名による聞き取りが行われることになり、私は意見書を準備して聞き取り調査にのぞんだ。
そして3週間後、苦情処理委員会から調査結果報告書が届き、当該公民館および公民館を所管する市の担当課に対する勧告書も同封されていた。
勧告の趣旨は、1 当該公民館に対し、講座の名称について「女子力」という言葉を男女共同参画に適した言葉に変更すること、2 所管課に対しては、公民館が市民の地域における社会教育および生涯学習等に係る企画運営を行うという公共性をもつことに鑑み、市内の男女共同参画を推進するような講座及び事業が行われるよう監督すること、を求める内容であった。
苦情処理委員会の意見は、基本的に私の意見に沿っていた。
名称の問題点として、
①講座の内容は、特に女性に限定するものではないにもかかわらず、「女子力」と銘打つことで、一見すると男性参加者の参加の機会が奪われている。
②「女子力」と銘打ち、講座内容が手芸・工芸および料理・食物に関するものが74.9%を占めていることは、女性が家事に関する事柄を行うものという性別役割分担意識を表示するものと捉えられる可能性がある。
また無意識に「女子力アップ」という名で続けることは、手芸・工芸、料理・食物に関することは女性が担うものという意識・メッセージを地域に送り続けることになり、性別役割分担意識を助長するおそれもある。
③「女子力」という言葉は、女性を一人前の人間としてではなく、子供に使われる言葉である「女子」を大人の女性に当て嵌めることで一定の女性像を求めているように捉えられるおそれがあり、差別的な表現ともいえる。
とし、講座内容には問題がないが、「女子力」という言葉を、公共的性格を有する公民館の主催する講座や行事の名称に使用するべきではなく、男性も女性も等しく参加意欲をかきたてられるような名称に変更すべきであるとしていた。
今回の苦情申し立てはちっぽけなことかもしれないが、こういった行動の積み重ねがジェンダー平等社会の実現につながればとの思いを込めて、私の闘いを紹介しました。