本年4月の改正民法の施行を契機に、これまで「面会交流」と呼ばれていたことが「親子交流」と呼ばれるようになった。親子交流は、離婚や別居により、離れて暮らすようになった親子が、定期的に会ったり(直接交流)、手紙のやりとり等をしたり(間接交流)することをさすが、直接交流については、同居親の悩みが大きい。とりわけ子どもが、発達障害を抱えているときは、その障害による子どもの特性を理解しないままに、別居親が子どもと接することが、子どもに大きなストレスになることがある。
改正民法施行前の事案ではあるが、面会交流の回数や、その方法について、父母で意見が対立したケースがあった。母は、子どもが発達障害を抱えていることから、面会交流を実施するにしても、子どもの発達の特性を理解し、子どもに問題行動が生じたときにも、適切な対応が期待できる「療育施設」での面会交流を希望した。具体的には「療育施設」が実施する「運動療育」の機会に、父が参加する方法である。しかし父の側は、面会交流と療育とは、趣旨が異なるとして反対し、一審の家庭裁判所も「面会交流の場を療育施設とすることについては、面会交流と療育の趣旨目的が異なる」として、母の主張を認めず、面会交流の支援機関の付添型による年8回の面会交流の実施を審判で命じた。しかしこの審判に抗告したところ、高裁は決定で、年8回の面会交流のうち、4回を、父が療育施設の実施する運動療育に参加する方法に変更した。高裁は、審判を変更した理由を、次のとおり述べている。
「確かに、療育(発達支援)は、障害や発達特性のある子に対し、その発達を促し、自立した生活と社会参加ができるよう訓練や支援を行うことをその直接的な目的とするものであるが、未成年者が、面会交流の際に、精神的な負担に晒されて癇癪やパニックに陥ることなく、非監護親の愛情を確認できるようにするためには、未成年者の特性をよく理解した専門職が関与することが望ましいといえる。また、非監護親である相手方が、未成年者と共に専門家による療育(発達支援)に関与することにより、子の特性に合わせた関わり方や養育環境の在り方を具体的に理解することが可能となり、その後の親子交流が子の発達や情緒の安定により資するものとなることも期待でき、日常の監護養育における課題を認識し、監護親による監護養育に間接的に協力し、未成年者のためにより良い監護環境を培うことが可能になるといえる。このような事情を併せ考えると、療育施設における療育に相手方が関与することは、面会交流の態様として合理性があり、許容されてよいものと考えられる。」
「面会交流と療育とは趣旨目的が異なると」の一言で、母の主張を排斥した家裁の審判と、高裁の決定を読み比べた時、どちらがより深く、子どもの福祉を考慮しているかは明らかだと思う。家事事件に関わるすべての裁判官に、子どもの福祉を、真に考慮する洞察力を持って欲しいと、願わずにはおれない。