6月13日、元朝日新聞記者のジャーナリストで、NPO法人官製ワーキングプア研究会理事でもある竹信三恵子さんの標題の講演会(於:大阪弁護士会館)に行きました。
1.法整備や「女性活躍」が叫ばれるけれど、建前と実態の乖離は激しい
わが国では、男女雇用機会均等法、女性活躍推進法など、各種法制度が整備されてきて、一見平等が達成されたかのように見えるが、実際には、生まれた時から死に至るまでの各ライフステージで、女性には経済活動(お金を稼ぐ労働)への制限や壁が存在する。
<幼少・学生期>
女の子は、将来「無償労働(介護やケア)」を提供してくれる便利な存在として親に期待されがちである。また、2018年の医学部不正入試事件が象徴するように、高等教育段階から見えない差別が存在する。
<就業・結婚期>
就職活動における情報格差、入社後の賃金格差があり、セクシャルハラスメントも後を絶たない。企業の7割近くで女性管理職比率は10%未満に留まる。女性活躍企業ランキング上位の企業(EY Japan、日本航空など)であっても、厚労省データベース上の男女賃金格差を見ると、女性の賃金は男性の4〜6割台に留まる。
「活躍」が賃金に反映されない構造がある。コロナ禍以降のテレワークは、男性の昇進意欲を上げる一方、家庭責任を持つ「子あり女性」にとっては、仕事と生活(家事・育児)の二重負担や長時間労働を招いている。また、「女性は結婚すれば安心」という意識が根強いが、実際は夫によるDVや財産の独占、失業時のリスクなど、結婚が経済的安定を保障するわけではない。
<高齢期>
現役時代の格差や、年金を夫に依存する制度設計の総決算として、高齢期の女性の貧困率は男性に比して急激に上昇する。
2. 日本の低賃金・長時間労働を支える構造的要因
山口一男氏の調査(2017年)によれば、大卒女性の課長以上の割合は高卒男性を下回り、勤続年数や学歴だけで説明がつかない「性差別」が存在する。
また、人出不足を理由とした労働時間規制の緩和(月最長100時間残業の容認など)は、「死なない程度(労働力の損壊防止)」の健康確保に過ぎず、育児等の生活時間を度外視している。全労連の調査でも、労働時間を増やしたい理由の78%は「今の収入では生活が苦しいから」であり、「もっと働きたい」わけではない。
さらに、日本の女性の家事・育児時間は男性の5.5倍であり、有償・無償労働を合わせた実質労働時間は先進国最長、結果として睡眠時間は国際比較で最も短い。
3. 打開のために…「活躍」の前に「人権」守れ
日本には性差別の明確な定義がない。これをちゃんと作るべき。また、2023年のEU「賃金透明性指令」を参考に、男女格差が5%以上ある場合は、企業側に合同賃金評価を義務付け、差別の申し立てに対する反証責任を雇用主側に課す強制措置が必要である。さらに、週35時間制(欧州例など)や、短時間労働でも賃金を下げさせない仕組みを導入し、「生活できる」労働時間を保障する。そして、世帯主義から個人単位の支援へ転換し、企業別労組を超えた産業別労組や横断型ネットワークを強化する。
4.感想
日本では、税や年金、各種給付金の制度など、男女格差を固定化させる複数の公的制度が絡み合って、高齢女性の貧困、母子世帯の貧困を生み出しています。
本講演は、この問題を、男女間の収入格差を助長させる社会全体の意識のみならず、法的制度の課題にも焦点を当てて、女性の一生を貫く経済的に不利な状況が語られました。自分の来し方を振り返っても実に「あるある」でした。打開策についても、具体的で説得力のある提案がなされていて、大変勉強になりました。