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2020年06月08日
弁護士コラム

vol.11 社会は確かに動いている

漫画家でライターの田房永子さんから、雑誌AERAの取材を受けたのは2014年のこと。テーマは「痴漢の研究」特集であった。当時、私は大阪弁護士会人権擁護委員会性暴力被害検討プロジェクトチームの座長として、3年間のプロジェクトチームの研究の成果『性暴力と刑事司法』(信山社)を出版したところで、女性に対する暴力や性暴力被害に関する専門家と目され、中学生の頃から痴漢犯罪の被害に遭い、痴漢被害がないことにされてしまっている社会に疑問を強く持っておられるという田房さんが、東京から取材にお見えになった。弁護士会で性犯罪に関する本を出版したものの、性犯罪には、社会もメディアもほとんど関心を払っておらず、ましてや政治家の関心は皆無に等しかった頃である。

 

田房さんは、『母がしんどい』(KADOKAWA)がベストセラーになった方で、常に女性の視点から、興味深いテーマを取り上げている。「男しか行けない場所に女が行ってきました」とか「キレる私をやめたい~夫をグーで殴る妻をやめるまで~」などなど。ご自分の赤裸々な体験から感じた素朴な疑問から出発し、納得のいくまでとことん行動していく、その姿をありていに描き、そして遂には問題を生み出している社会構造にまで掘り下げ、分析している。

 

そんな田房さんの本年6月4日発売の新著『男社会がしんどい 痴漢だとか子育てだとか炎上だとか』(竹書房)の「はじめに」で、2016年頃は、痴漢犯罪被害についての内容やタイトルの漫画は、本の企画として断られ、成立しなかったが、2017年から始まった#Metoo運動などによって風向きがガラリと変わり、本もたくさん出版されるようになっている。と、「男社会がしんどい」というタイトルの本を出すことへの、ここ数年の急激な世間の意識変化について触れている。

 

2014年に『性暴力と刑事司法』を出版したときには、そこで示した日本の性刑法への改革の提言が、いつになったら日の目を見ることになるのか、まったく前が見えない状態であったが、その後、思いもよらなかった110年ぶりの刑法改正が実現した。そして今年は、2017年刑法の3年後の見直しについて議論するため、検討会が法務省内に立ち上がり、委員には被害当事者の立場で声を上げ続けている山本潤さんが選出された。こういった流れに影響を与えた動きの一つとして、昨年4月から全国各地に広がったフラワーデモがあるだろう。田房さんはフラワーデモの発案者3名のうちの一人であったと聞いている。

 

この6月、いよいよ検討会がスタートする。被害実態に即した議論が行われるように注視していきたい。

 

弁護士 雪田樹理

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