離婚の法律相談に来られた方が、目の前で、私にこう尋ねます。
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「夫とは顔を合わせれば喧嘩ばかり。もう駄目なのはわかっているけど離婚する決心がつきません。先生、私、どうしたらいいですか?」
・・・・・。
う〜ん。悩ましいですね。でも、正直に言います。あなたが離婚した方がいいか、離婚しない方がいいか、弁護士にはこたえようがありません。
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「離婚したら経済的にやっていけるかどうか、それが心配です。お金は、どうしたらいいでしょうか?」
・・・・・。
そう、それが一番心配ですよね。でも、弁護士は財産分与や養育費を取り決めるアドバイスはできても、今月のあなたの生活費を支援することはできないんです。
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「私はまだ相手のことを想っているのに、彼はほかの女に気持ちが向いて、私とは話もしたくないと言っています。どうすれば、彼の心を取り戻せますか?」
・・・・・。
それはお辛いですね。でも、離れていった人の気持ちを取り戻す術を、私はもっていません。お役に立てずにごめんなさい。
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離婚問題に直面している人はたくさんの心配事や決断すべきことを抱えて法律事務所に来られます。でも、悲しいかな、弁護士に出来ることは法的知識や技術を中心としたもので、それだけで当事者のサポートとして完結するものではありません。
でも、自分のできることに限界があることを自覚しつつ、目の前で困難と立ち向かっている依頼者(相談者)に対して、法的知識だけではなく、離婚事案に多数関わることで得た経験知をフル稼働して、より役に立つサポートをしたいと、日々、悪戦苦闘しているのも私たち弁護士です。
「実践 離婚事案解決マニュアル」は、弁護士が当然持っていなければならない法的知識、技術だけではなく、臨床心理学的カウンセリング手法や社会福祉的観点からの知識、関連する機関との連携の手法など、多面的知識や技術を習得し、より総合的に当事者をサポートできるようにしたいとの願いで勉強会を重ね、発刊に至った本です(二宮周平教授編集代表で本年6月25日、日本加除出版より発行)。
当事務所の有村とく子弁護士、当事務所と関わりの深い社会福祉士、それから私も、執筆を担当しています。たくさんの方に手に取っていただけますように。
弁護士 乘井弥生