去る9月18日、ヒューライツ大阪主催のオンライン(ZOOM)セミナー「人権教育としての性教育―国際的なガイダンスを目指した実践を」を受講した。報告者は、ユネスコ、ユニセフ、WHOなど国連機関が共同で発表した「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」の翻訳をされた艮香織さん(宇都宮大学共同教育学部教員)と元公立中学校保健体育科教諭で、性教育を進めてきた樋上典子さん(関東学院大学非常勤教員)であった。セミナーの中では、日本の性教育の現状や国際ガイダンスを目指した性教育の実践について言及があった。
日本では、性教育については扱うことになっているものの、基準がなく、学ぶ時間は数時間である。その背景には、性教育へのバッシング、子どもに過激なことを教えるべきではないと言った声があり、教育現場でどこまでのことを教えるかは学校や教員の裁量に委ねられている。一方で、スマートフォンをもつ子どもが増え、SNSやインターネットを利用する機会も早くに与えられることから、子どもが性的なコンテンツにアクセスする機会も増え、性の目ざめが早くなっているという現状があり、子どもを取り巻く環境は急速に変化している。「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」によると、性教育は5歳から始めることが推奨されているが、学校に任せているのでは子どもに適切な情報は届かないのが現状である。
家庭でどのような性教育をしたらよいのだろうかと、考えるきっかけになり、『おうち性教育はじめます』(2020)フクチマミ/村瀬幸浩(角川書店)を購入し、読んでみた。この本では、家庭でまずすべき3つのことが書かれているが、その一つは、子どもが小さいときはタッチング(抱きしめる、手をつなぐ)をし、小さい時も大きくなってもリスニング(言葉をさえぎらずに子どもの言葉に耳を傾ける)を大切にすることである。子どもが親から「愛されている」と感じられると相談や性の話もできる関係になるということであり、性教育をする上では、子どもとの信頼関係が土台にないといけない。この本は、漫画で描かれている部分が多く、読書が苦手な方でも読みやすいので、気になった方は是非、読んで性教育を実践してみてはいかがでしょうか。
弁護士 髙坂明奈