長引く新型コロナウィルスの影響もあり、リモート会議やリモート打ち合わせが私たちの生活に根付いてきました。そこで、人と直接会わない形の調停について、書いてみたいと思います。
ところで、皆さん、電話調停という言葉を聞いたことがありますか。
電話調停というのは、裁判所から代理人弁護士の事務所に電話がかかってきて、電話ごしに調停委員や裁判官と話をして調停を進める方法です。
電話による調停が認められるのは、当事者や手続代理人が遠隔地に居住していたり、身体上の理由等で係属裁判所に出向くことが難しいと判断される場合です。
例えば私が代理人となった事例では、夫と関東で結婚生活を送っていた方が、関西の実家に子どもと一緒に帰り、妻から離婚調停や婚姻費用分担調停を申し立てる場合などで、これまで何度か電話調停の方法を活用しました。調停の管轄は原則相手方の住所地の家庭裁判所に申し立てることになりますので、夫が関東で暮らしている場合、東京家裁や横浜家裁といった関東の家裁が管轄になります。しかし、遠方に出向くとなると子どもを抱えている人は保育の手配をしなければならず、交通費の工面など困難が生じます。そのような場合、裁判所に「これこれの事情で電話調停を望む」ことを伝え、「裁判所が相当と認める」と「電話調停」の方法をとることが可能となるのです(家事事件手続法54条、258条1項)。
電話のマイクとスピーカーの機能を使って、当事者と事務所の中で調停委員と話をし、逆に、調停委員が相手方と話をしている間は、電話は切って待機することになります。この待機時間はこちら側にとっては「作戦タイム?お茶タイム?」の時間となり結構使い勝手のいい方法です。
ただし、離婚調停の成立の場面においては、離婚という法的な身分関係の変動を伴うため、電話調停で離婚を成立させることはできず、成立が見込める期日には直接出向く必要があり、それが難しい場合には、「調停に代わる審判」といった別の方途を考えることになります。
いずれにしても、電話調停の方法は、遠隔地に住む当事者等移動に困難を抱える当事者にとって、使い勝手のある方法だといえるでしょう。
ところで、この電話調停の方法とは別に、昨年11月1日、最高裁判所は、「ウェブ会議」による家事調停を12月8日以降に東京、大阪、名古屋、福岡の4家裁で試行すると発表し、大阪弁護士会でも11月中旬に大阪家裁の裁判官を招いた形で「ウェブ調停の説明会」が開かれました。
当事者の利便性という点ではメリットのある制度ですが、なりすましの危険や第三者の干渉、秘密保持など心配な点も残されています。
「ウェブ会議」による家事調停は、私はまだ経験がないので、感想はまたの機会に書きたいと思います。
弁護士 乘井弥生