離婚等の家事事件に関する調停は、家庭裁判所で開かれますが、基本的に調停が行われる家庭裁判所まで足を運ばなければなりません。しかし、遠方に住んでいて、毎回、裁判所まで行くための時間や交通費がかかるなど負担が大きい場合、電話による調停を行うことができます。例えば、依頼者の方が大阪に住んでいても、相手方が東京に住んでおり、東京家庭裁判所で調停が開かれるケースでは、大阪の当事務所に依頼者の方と弁護士が一緒に待機して、東京家庭裁判所からの電話を待ち、調停委員らと電話で話をして調停を進めていきます。調停の度に東京まで行く必要がなく、経済的にも時間的にも負担が軽く便宜ですが、協議が整い、いよいよ離婚調停が成立する日には裁判所に出頭することが必要とされています。
ところで、今年5月、家事事件手続法が改正され、今後、「映像と音声の送受信による通話の方法」によって離婚を成立させることもできるようになります(但し、施行日や方法は未定)。いわゆる「ウェブ調停」です。現時点では全国どこの裁判所でも利用できるわけではありませんが、大阪家庭裁判所では「ウェブ調停」が導入され始めています。
DVが離婚原因のケースでは、現状は、安全を守るために、妻と夫がそれぞれ裁判所の別室で調停を行い、登庁や帰庁時にも接触しないように配慮する工夫がされていますが、被害者にとっては同じ建物にいるだけでも恐怖が大きく、調停に出向くこと自体が大きな精神的ストレスになっています。
DVのケースで、「ウェブ調停」が利用されると、DV被害者は相手方のいる裁判所まで出向く必要がなくなり、パソコン上の画面を通じて調停に出席して、調停委員と話しをし、離婚を成立させることも可能になるようです。遠方にいる場合に限らずに利用できますので、相手方との接触を回避する必要の高いDV被害者にとって、家事調停手続を安心して利用することができる朗報ではないでしょうか。
弁護士 雪田樹理