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2019年01月24日
DV子ども性被害・セクハラ
雪田 樹理

性暴力に関する立法改革に向けて  【弁護士 雪田樹理】

1 はじめに

 

2017年7月に110年ぶりに刑法の性犯罪に関する規定が改正されましたが、強姦罪に替わった新しい「強制性交等罪」でも、犯罪が成立するためには、「暴行または脅迫」が要件となっています。そして、判例では「相手方の抗拒を著しく困難ならしめる程度」の暴行または脅迫が必要とされていますが、実際の被害場面では、抵抗をすることが困難な場合が多く、それほどの暴行や脅迫がなくとも、被害者の性的自由や性的人格権が侵害されている事例が、性暴力被害の大半を占めているという実態があります。

刑法改正の附則に3年を目途とした改正の見直しが明記されているため、被害当事者や支援者などの間では、さらなる刑法改正に向けた動きがおきていますが、世界中で2年程前から広がっている#Me Tooの運動が、日本ではあまり浸透していないように、社会全体の意識や制度を変えるだけの大きなうねりにはまだなっていないようです。

そこでさらなる立法改革を具体的に推し進めるため、私が関わっている2つの団体でも、昨秋、法改正に向けた勧告や要望書を公表しました。

 

2 「性犯罪に関する各国法制度調査報告書~#Me too を法律へ Yes means Yes」

 

国際人権NGOのヒューマンライツ・ナウでは、性犯罪や被害者支援の仕組みなどについて、アメリカ、カナダ、イギリス、フランス、ドイツ、スウェーデン、フィンランド、韓国、台湾の各法制度を比較調査し、国際スタンダードを踏まえた立法に関する提言を行いました。

冒頭で述べた「暴行又は脅迫」を求める要件については、これを撤廃し、相手方の同意・自発性のない性行為はすべて「強制性交等」「強制わいせつ」として処罰対象とすること。相手方の自発的意思が明示・黙示に表現されていないのに性交等をすることは処罰対象とするYes Means Yes の法制を導入すること。そして、暴行や脅迫は加重類型とすること。同意要件の定義を明確にすること。また、相手方の同意に関する合理的確信がない場合、相手方の自発的意思の確認に関する注意を著しく怠った場合も有罪とする「同意の認識に関する過失罪」の法制を導入することなどを勧告しました。

これらは、不同意の性行為を処罰しているカナダやイギリス、自発的に参加していない者との性交等をレイプ罪とするYes means Yesの法制を昨年7月に新しく採用したスウェーデンの法制を参考にしています。

この他、子どもの保護を徹底するため、性交同意年齢は16歳に引き上げるべきであること。相手の年令に関する錯誤の場合も処罰対象とすること(16歳以上であることについて合理的な根拠に基づき確信していなかったときは犯罪とする)。子どもに対する地位利用等の犯罪類型化。そして大人も含めた優越的地位や関係性を利用した性行為の処罰化、セクシュアル・ハラスメントに対する刑事罰の導入。公費によるワンストップ支援センターの設置。被害者に配慮した性暴力専門の捜査体制の構築などを勧告しました(詳しくはヒューマンライツ・ナウのウェブサイトから報告書を入手できますhttp://hrn.or.jp/news/14625/)。

 

3 「法制審議会での刑法改正に関する審議についての要望書」

 

全国39都道府県にある43の性暴力救援センターが登録している性暴力救援センター全国連絡会は、各センターが支援した被害者が警察に被害申告をしても受理されなかったケース、不起訴になったケース、無罪になったケースに関する事例調査を行い、その中で被害者の方から公表の同意を得られた典型事例8つを分析し、立法事実に基づき、刑法改正に関する審議を求める要望書を法務大臣宛てに提出しました。

「暴行脅迫」の要件をなくし、不同意性交を処罰する方向で議論すること。明確かつ自発的な同意を求めること。地位利用等の犯罪の類型化。性交同意年齢を16歳に引き上げることなどを要望しました。

今年は、刑法の性犯罪規定の改正に向けての具体的な議論を巻き起こすとともに、性暴力被害者支援法の立法を実現し、公費による財政的裏付けのある病院拠点型のワンストップ支援センターが全国各地に広がる年になることを目標に頑張りたいと思います。

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