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ニュースレター

2019年01月24日
結婚・離婚
髙坂 明奈

夫婦別姓問題を新たな夫婦別姓訴訟から考える  【弁護士 髙坂明奈】

1 事実婚を選択する理由

 

前号のニュースレターで事実婚について記述をした。事実婚を選択するメリットとして挙がるのが「自分のアイデンティティを形成する氏を変更しなくてよい」「氏の変更に伴う煩わしい手続を回避できる」ということだ。私が事実婚を選んだ理由の一つでもある。しかしながら、事実婚では、パートナーやその家族との法的な家族関係が生じないため、相続が発生しないなどのデメリットがある。そのため、夫婦別姓の状態でいたいが、やむを得ず法律婚を選択する人もいる。

結局のところ、日本の法律において夫婦別姓が認められていないことが問題であり、立法上、夫婦別姓の法制度がないことは憲法違反であるとして、今、複数の訴訟が起こっている。ちなみに、夫婦同氏を義務付けている国は、日本以外にはほとんどなく、国連女性差別撤廃委員会から何度も勧告を受けているが現状は変わっていない。

 

2 新たな夫婦別姓訴訟

 

選択的夫婦別姓制度に関しては、平成27年12月16日、最高裁が「夫婦同姓の制度は我が国の社会に定着してきたもので、家族として呼称として意義があり、その呼称を一つにするのは合理性がある」などとし、合憲の判断をしている(15人中5人の裁判官は「違憲」であるとしており、その理由などについては、2016年夏号の当事務所のニュースレターで宮地弁護士が記述している)。

そこで、違ったアプローチで訴訟をすべきであるとして、青野慶久氏(サイボウズ代表取締役社長)ら4人が原告となり、新たな夫婦別姓訴訟を平成30年4月に提起した。青野氏は、妻の氏を選択し、法律婚をしている男性で、仕事上は旧姓を通称として使用している。

本訴訟で青野氏らが求めているのは、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」と定める民法750条の改正ではなく、戸籍法において、「婚姻をして氏を変えた者も、旧姓を戸籍上の氏として称することができる」という改正を行うことである。

例えば、離婚をした場合については、婚姻時に氏を変更した者は民法上の氏は旧姓に戻るが(民法767条1項)、戸籍法の定めるところに従って、婚氏続称届を出すことによって、呼称上の氏(戸籍謄本に記載される氏)は離婚時の姓を呼称することができる(同条2項)。それと同じように、婚姻の場合も、一旦どちらかの氏を選び、婚姻届を出すが、届出(旧姓続称の届出のようなもの)をすることで旧姓を呼称上の氏として使うことを法律的に認めることを求めている。

 

3 夫婦別姓問題は利便性の問題か?

 

この青野氏らの訴訟に対しては、あくまで求めるべきは実体法である民法の改正であり、手続法である戸籍法を改正して呼称上の氏を拡大することは通称使用を法的に認めることと同義で問題解決にならないと異論を唱える人もいる。

その理由は、青野氏らが求める手続が実現するとしても、まず婚姻届を提出する際に、どちらかの氏を「選択」するということは変わらない。そこで、どちらの氏を選ぶのかという問題が生じる。また、そもそも夫婦別姓を求める運動の根底には、「イエ」制度を踏襲している「筆頭者」をはじめとする戸籍編成への問題意識がある。しかし、呼称上の氏が拡大し、利便性が増せば、民法の改正は棚上げされ、別姓の問題に内在する戸籍制度がもたらす差別や偏見というより大きな問題が見えなくなるのではないかとの懸念がある。

自分のこととして考えた場合に、私は旧姓続称のような呼称上の氏として旧姓を名乗ることが認められても、おそらく法律婚を選択しないと思う。それはやはり、民法上の氏としてどちらかの氏を選ばなければならないということに違和感を持つためだ。

青野氏らが主張する法改正が認められるか否かは分からないが、もし認められれば、戸籍事務は複雑になり混乱するであろう。それならいっそ、「筆頭者」に紐つけられる管理はやめて、マイナンバー制度が導入されたのだから、個人単位の管理にしようという動きにならないだろうかとも思う。青野氏らの夫婦別姓訴訟及びその後に提訴されている民法改正を求めた第二次夫婦別姓訴訟に関して、今後の動向に注目したい。

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