24条の重要性を簡潔にわかりやすく解説
2013年1月に設立された「明日の自由を守る若手弁護士の会」(通称「あすわか」)は、自民党の改憲草案(2012年4月発表)に危機感を抱いた若手弁護士が立ち上げたグループです。設立以来、立憲主義や民主主義の価値を多くの人々に伝えることを目的として、全国各地で「憲法カフェ」を開き、その内容を本にして広める活動をしています。
その「あすわか」から、2018年11月3日、「憲法カフェへようこそ」シリーズ第3弾として表題の本(かもがわ出版)が出ました。
この本は、憲法24条が改憲ターゲットになっていることに警鐘を鳴らすものです。今の憲法24条は、家族生活における個人の尊厳と両性の平等について定めた条文で、第1項「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。」第2項「配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。」としています。
自民党改憲草案24条は、「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない」(新設)第2項 「婚姻は、両性の合意に基づいて成立し、…以下現行第1項と同文」第3項「家族、扶養、後見、婚姻及び離婚、財産権、相続並びに親族に関するその他の事項…以下現行第2項と同文」としています。
改革草案のいったいどこが問題なの? と思えそうですが、なぜ今の24条を自民党改憲草案のように変える必要があるのか、この本が鋭く指摘しています。まずは、24条の「生い立ち」、9条との結びつき、一人ひとりの生きる権利を守る憲法25条との関係についての解説があります。そして、今の憲法24条が私たちの暮らしにどのようにかかわっているのかについて、DV・モラルハラスメント、離婚したくてもできない妻の現実、育児しながら働きたい女性にふりかかる職場でのマタニティ・ハラスメントや保育園不足の問題、児童虐待、性暴力の被害者へのバッシング問題などを取り上げ、各分野で活躍する若手弁護士やライターが簡潔にわかりやすく解説しています。
また、今の憲法が13条のみならず24条でも重ねて「個人の尊厳」と明記していることの意味についての的確な指摘もされています。
さらに、前文部科学事務次官の前川喜平さんの「学校が描く『家族』」と題した特別寄稿が付いています。そこには、安倍政権下で改正された教育基本法が「全体」の利益に奉仕・貢献する人づくりへの指向を色濃く有するものであること、これを受けて、法的拘束力をもつ学習指導要領にも「國體思想」復権への企図が潜んでいて、国が「かくあるべし」と考える家族のあり方を子ども達が道徳教育の中ですり込まれる危険性が高まっていると指摘されています。
改正勢力の狙いは何か
24条が自民党改憲草案24条のようなものに変えられることは、多様であるべき家族のあり方を戦前の「家」制度の価値観で縛りつけ、ひいては国民を戦争に駆り立てていくこととつながっている、そのことをこの本を読んで再認識しました。
戦争の惨禍を二度と起こさないように、憲法「改正」の動きには、何がどのように変えられようとしているのか、改正しようとする人たちの狙いは何なのかを見極めることが大切だと思います。「改正」と名のつくものについては敏感でありたいし、十分警戒したいものです。改憲問題を考えるにあたり、基本に立ち返るための学習材料として、この本はとても役立ちます。
是非多くの方に読まれることを願ってご紹介いたします。