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2022年07月29日
性差別・ジェンダー平和・人権
乘井 弥生

弁護士会のリーダー選びとクオータ制  【弁護士 乘井 弥生】

■ 50年前の記憶

今から約50年も前の出来事なのに、不思議と記憶に残っていることがあります。小学5年生の教室で、クラスの学級会の会長と副会長を決める投票をしていました。クラスは男子が女子よりやや人数が多く、男子の中の活発な子が男子の支持で学級会の会長になり、女子の中の活発な子が女子の支持で副会長になるのが見慣れた風景でした。

あるとき、男子の中で2人の男子に票が割れ、結果、女子の多くから支持されたリーダー的存在の女子が最多票の結果となりました。「あ、今度は女子が会長になるんだ!」と思ったその時、担任の男性教員が「会長は男子と決まっているから、もう一度選び直すように」と指示したのです。

結局、投票がやり直され、いつもの見慣れた風景のとおり、男子が会長、女子が副会長で決まりました。ただそれだけの出来事だったのですが、私は「ああ、それが世の中の仕組みなんだ」と「学習」した一方、「なぜ、そう決まっているんだろう」と違和感を持ちました。この違和感が、おそらくこの日の出来事を記憶に留まらせたのでしょう。

小さな出来事ですが、私がこのことを「性差別の一つの事象」として認識できたのは大学生になってからです。こういった違和感を抱く出来事は中学時代にも高校時代にもありました。学校は人権を教える場であると同時に、差別を再生産する場でした。

■ 司法におけるジェンダー・アンバランス

さて、私が長々と個人的な経験を書いたのは、50年たった今も社会は変わったようで、実のところ「トップは男」という意識とシステムは大きく変わっていないと痛感するからです。

現在、「あらゆる分野で『指導的地位』に占める女性の割合」を増やすことが社会の喫緊の課題だとして、改革が進められています。いわゆるジェンダー・アンバランスが社会の停滞を招いているとの問題意識です。法曹界もジェンダー・アンバランスの問題と無縁ではありませんが、改革は遅々として進まず、司法のトップである最高裁の女性判事の数は15名中わずか2名で、変革の兆しすら見えません。司法は「社会の停滞に貢献しているのでは?」と思う程です。在野法曹と呼ばれる弁護士の世界でも同様です。

長年の性差別の積み重ねでジェンダー・アンバランスが生じているのですから、状況を変えるために積極的改善措置(例えば、「指導的地位」に占める女性の割合を一定数以上と決めるクオータ制)の導入は不可欠ではないでしょうか。なお、クオータ制とは人種、民族、性別などを基準として社会的・構造的に不利益を受けている者に一定数を割り当てる制度をいいます。

■ 弁護士会のリーダー選びとクオータ制

大きなことを言う前に、まずは自分が属する足元から状況を変える必要があるでしょう。現在、大阪弁護士会でも、弁護士会の会長や副会長といったリーダー的立場の人(業界内では「執行部」と呼ばれている人)の女性割合について、クオータ制の導入が議論されています。

ところが、クオータ制導入に対しては、根強い反対論、慎重論の意見があります。例えば、「女性弁護士も徐々に増えているので、クオータ制など導入しなくても状況は良くなっていくのではないか」「一定割合の女性を優先的に執行部に入れる制度は民主制、平等に反するのではないのか」「そもそも女性の側にリーダーになろうとする積極性が欠けていることや自信の無さが問題ではないのか」といった意見です。

皆さんは、こういった消極意見をどう思われるでしょうか。私はこういった消極意見を聞くたびに、連綿と続き、また今も残る性差別の根深さが軽く捉えられているように思います。男性が就くことを前提に作られた重要なポジションに女性が就くことの困難さや、見えにくいけど確かに存在する数々の壁が、放っておいて自然となくなることはないでしょう。長く続いてきた不平等な状態を変えていくのに、積極的な改善措置は不可欠ではないかと思うのです。

今、社会の重要なポジションにいる人たちは、どれほど性に基づく差別を受け、不利益を甘受した経験をお持ちなのでしょうか。まずは、人為的なテコ入れをしてでも、社会のさまざまな場での意思決定におけるジェンダー・アンバランスを変えていくのが第一歩だと思うのです。

弁護士会がジェンダー不平等の問題にどう向き合って改革の一翼を担っていくのか、市民の皆さんにも是非、注目してもらいたいと思っています。

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