はじめに
昨年5⽉、離婚後共同親権の導⼊を含む⺠法等改正法が成⽴しました。公布から2年以内の施⾏となっており、今年は施⾏に向け準備が本格化するものと思われます。
離婚を扱うことの多い当事務所にも親権に関わる勉強会の依頼が増えてきました。前号のニュースレターで「法改正の概要、Q&A」を掲載しましたが、さらに、この問題を考えたいと思います。
あくまでも「選択的」共同親権の導⼊であること
法改正により、現⾏法の「離婚後単独親権」が「離婚後共同親権」に変わると理解されている⽅がおられますが、これは誤解です。あくまでも法改正により選択肢が増えるということです。すなわち、当事者の真摯な合意のもと離婚後単独親権だけでなく、共同親権を「選択する」ことが認められるようになるということですから、今までどおり「⺟⼜は⽗が単独で親権者となる場合」も当然あります。離婚で共同⽣活を解消した後、どちらかの親が⼦を主に世話をする場合がほとんどだと考えられます。ですから、日々子と生活を共にする親が単独で親権者となった方が子の福祉に適う場合の方がむしろ多いものと、私は思います。
離婚後共同親権とすべきでない場合
未成年の⼦をもつ夫婦が離婚する場合、これからは、共同親権を選ぶのか、単独親権を選ぶのか、単独の場合⽗か⺟か、当事者は良く考え、話し合って決めることになります。そして、当事者で協議が整わないとき、裁判所の判断となります。その場合裁判所は、「⼦の利益のため、⽗⺟と⼦との関係、⽗と⺟との関係その他⼀切の事情を考慮」して決めることとされ、「⽗⺟の双⽅を親権と定めることにより⼦の利益を害すると認められるときは、⽗⺟の⼀⽅を親権者と定めなければならない」としています。「虐待」や「DV」、「⽗⺟が共同して親権を⾏うことが困難な事情」がある場合は、単独親権を指定することとなっているのです。なお、DVケースの場合、「とにかく早く離婚したい」という焦りや、「共同親権なら離婚に応じる」という他⽅の提案に乗って、対等に話し合える関係性のないまま共同親権に合意することが懸念されます。離婚後も紛争が⻑引く状況とならないよう注意が必要です。
仮に共同親権を選択する場合であっても「監護者の指定」は⼤事
他⽅、離婚後共同親権のプラス⾯を評価し、共同親権を選択する夫婦も⼀定数、出てくることでしょう。どのような新しい親⼦関係が⽣まれるのか⾒守っていきたいと思います。ただ、紛争に⽇々接する弁護⼠の視点から⾔うと、将来の紛争予防という点から、仮に共同親権を選択する場合であっても、「監護者の指定」をすることを勧めたいと思っています。
親権とは、⼦の⾝上監護、財産管理等からなり、⾝上監護の中には、居所指定、教育や医療に関わる決定など広範囲な決定ごとが含まれます。仮に離婚後共同親権を選択した場合、⼦と⽇常⽣活を共にし養育を担う親は、他⽅親との話し合いや同意を得る必要が⽣じます。他⽅親の同意が必要な範囲は、国会審議などを
⾒ると、驚く程広いです。
法は、「急迫の事情があるとき」や「⽇常⾏為」については他⽅親の同意を得ず単独で⾏使できるとしていますが、何をもって「急迫の事情があるとき」や
「⽇常⾏為」と呼ぶのか、基準は未だ不明瞭で、主に⼦の養育を担う親や、教育、医療関係者に多⼤な負担と混乱をもたらすことも危惧されます。
そのような危惧を軽減し、将来の紛争を未然に防ぐためにも、仮に共同親権を選択する場合であっても
「監護者の指定」が⼤事だと考えられるのです。
今回の法改正は、⼦どもの権利を守り促進するということで進められてきました。新しい法律によって、
⼦どもと主たる養育親(社会では⺟親が多い)の安全、安⼼な⽣活が混乱することのないよう、離婚後共同親権の導⼊を引き続き注視していく必要があります。