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2025年01月29日
仕事・労働性差別・ジェンダー
宮地 光子

不平等との闘い30年 国連に見た希望  弁護士 宮地 光子

昨年10⽉、ジュネーブで開かれた国連⼥性差別撤廃委員会(以下CEDAW)において、8年ぶりとなる⽇本政府報告の審議が⾏われ、⽇本からは120名を超えるNGOのメンバーがロビー活動を⾏った。その中には、男⼥賃⾦差別事件の元原告たちや⽀援者たちもいた。彼⼥たちが、⽇本を⽴つ前の10⽉12⽇、朝⽇新聞デジタル版は「『男は管理職、⼥は平社員』不平等との闘い30年 国連に⾒た希望」というタイトルで記事を配信した。
この記事の冒頭に「⼤阪府の⻄村かつみさん(76)は、14⽇、関⻄空港からスイス・ジュネーブへ向かう。⽬的地は、8年ぶり5回⽬の国連だ。30年前には縁もゆかりもなかった地には、悔しさも喜びも、希望ももどかしさも、⼈⽣のすべてが詰まっている。今回はバトンをつなぐ旅ともなりそうだ」と書かれているのを読んだ時、私は胸が熱くなった。私⾃⾝は、⼀度も、国連に⾏くことができていない。しかし私の弁護⼠としての活動もまた、国連の存在によって⽀えられたからである。
記事で紹介された⻄村かつみさんは、住友電⼯男⼥賃⾦差別訴訟の元原告である。同訴訟は、国の差別救済の怠慢を理由に、企業だけでなく、国をも被告にした裁判だったが、国が「均等法は、雇⽤におけるすべての男⼥差別を禁⽌するものではない。」と居直った答弁をしてきたとき、反論の根拠としたのは、国連⼥性差別撤廃条約だった。
そして同訴訟は、2000年7⽉に、⼤阪地裁で、男⼥別採⽤は、憲法14条の趣旨には反するが、昭和40年代においては、公序良俗に反しないとして敗訴判決がなされた。この敗訴判決を乗り越えて、⼤阪⾼裁で勝利的和解を勝ち取ることができたのも、原告の⼥性たちのCEDAWへのロビー活動とCEDAWからの勧告があったからだった。
原告の⼥性たちは、⾼裁での原告本⼈尋問を前にして、2003年7⽉に開催されたCEDAWでロビー活動を⾏い、⼤阪地裁で受けた不当判決を国際社会に訴え、 CEDAWからは、「直接差別および間接差別の両⽅を含む、⼥性に対する差別の定義を国内法に盛り込むこと」や、間接差別についての認識を向上させるためのキャンペーンを、裁判官および法曹関係者⼀般を対象に⾏うことを⽇本政府に求める勧告を引き出した。
その甲斐あって、⼤阪⾼裁では「直接的な差別のみならず、間接的な差別に対しても⼗分な配慮が求められている。」とする和解勧告⽂がだされ、2003年12⽉に、原告の⼥性たちの昇格を含む勝利和解が実現したのだった。

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そして2006年6⽉、間接差別の⼀部を禁⽌する均等法改正がなされた。しかし禁⽌される間接差別は、採⽤における⾝⻑・体重・体⼒の要件や、採⽤や昇進における転勤要件に限定された不⼗分なものだった。
この間接差別の禁⽌規定の不⼗分さに、裁判で⾵⽳を開けたのが、昨年5⽉13⽇に、東京地裁で判決が出たAGCグリーンテック事件の原告だった。同判決は、均等法が禁⽌の対象としていてなかった措置(具体的には社宅制度の利⽤)について、総合職と⼀般職を理由にした差別が、間接差別にあたるとした初めての判決であった。しかし原告が、総合職の男性との賃⾦格差を違法と主張した点については、会社の裁量の範囲内であるとして認められなかった。
同事件の原告も、これまでの男⼥賃⾦差別事件の元原告らや⽀援者らと共に、昨年10⽉のCEDAWのロビー活動に参加し、英語でスピーチを⾏った。その甲斐あって、CEDAWの委員からは、AGCグリーンテック事件、東和⼯業事件、⼤阪医科薬科事件、中国電⼒事件の各判決について、裁判所が男⼥の賃⾦格差を認めながら、男⼥差別ではないと判断していることについて、⽇本政府(代表・男⼥共同参画局⻑)はどのように考えているのかとの質問がなされた。しかし⽇本政府は、この質問には全く答えることがなかったという。そして⽇本政府は、男⼥賃⾦格差の背景には、アンコンシャスバイアス(無意識の差別)が原因になっていると答弁していたが、CEDAWの委員からは、アンコンシャスバイアスだけでなく、構造的差別があると考えられないかとの質問がなされた。しかしこの点についても⽇本政府は答えていない。
⽇本政府の答弁の姿勢には失望を禁じ得ないが、裁判で闘った⼥性たちや⽀援者たちの悔しさが、国際舞台で取り上げられること⾃体が、希望なのだと私は思う。

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審議を踏まえて、昨年10⽉29⽇、CEDAWは、⽇本政府報告書に対する総括所⾒を発表した。その中で、CEDAWは、個⼈通報制度(条約に定められた権利が侵害された際に、個⼈がCEDAWに直接通報できる制度)を定めた選択議定書を、⽇本政府が、いまだに批准していないことについて、「時間がかかりすぎている」と懸念をあらわにし、批准に対するあらゆる障壁を取り除くよう勧告している。総括所⾒で⽰された勧告は、60項⽬に及んでいるが、その中の4項⽬は、フォローアップ項⽬として、2年以内に実施することが強く求められている。それには「選択的夫婦別姓の導⼊」や「中絶についての配偶者の同意要件の撤廃」なども含まれている。CEDAWの勧告を⽇本国内で実現していく草の根の⼒が、これから試されるのだと思う。

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