【「子どもにとっての離婚」をトータルにとらえる】
統計によると1年間に婚姻届が出されるカップルの数は約67万組。比べて離婚届を出すカップルの数は約24万組だそうです。そして、離婚件数の中で、未成年の子どもを持つ夫婦の離婚は全体の約6割で約14万組。子どもの総数でいうと年間約24万人の子どもたちが親の離婚を経験するという数字が出ています(厚生労働省「平成26年・我が国の人口動態」より)。これって結構な数です。
親の諍いほど、子どもにとって嫌なことはありません。大人が声を荒げて言い争う姿を見ることですら、子どもの心を重くします。ましてや、別居を決めた親に伴われて、ランドセル一つ背負って家を出ることになったり、転校したり、友達と別れたり、ペットを置いてきてしまうといった経験を余儀なくされることもあります。親の離婚は子どもにとって「不幸の種」のようにも見えます。他方、親の離婚が子どもにとって希望ある生活の第一歩となることもあります。
親の離婚は子どもにとってどういうものなのか、そんなことを漠然と思っているとき、手にしたのが神原文子さん著の『子づれシングルと子どもたち』(2014年3月発行、明石書店)です。神原さんはひとり親家庭の抱える困難について調査研究を重ねる一方で、「ひとり親家庭の子どもはかわいそう」との世間の声に違和感を覚えてきたと言います。そして、子どもたちは実に多様であり、十把一絡げに捉えるのではなく、子どもたちの生活と思いを可能な限りトータルに捉えたい、と強く思うようになったと巻頭で述べています。
【「子どもにとって望ましい離婚」の具体的条件とは】
本書は「子どもの貧困と就学支援」「同居している親と別居している親と」「非婚の子どもとして」「親の恋愛・再婚」など、とても興味深い章立てとなっていますが、私が思わず線を引いたところを紹介します。
「親の離婚〜のぞましい離婚のあり方とは〜」の章です。離婚イコール子どもにとって不幸ではない、インタビューを通じて、「両親の離婚後の生活のほうがよくなった」と認識している子どもたちもいると述べ、そして、「子どもにとって望ましい離婚」と評価できる具体的条件を次のように列挙しています。
1,両親が離婚してよかった、あるいは、両親の離婚は仕方がなかったなどと、子どもの立場で、両親の離婚を受け入れていること。
2,離婚後、親子が落ち着いた生活を送ることができること。
3,同居している親が比較的安定した仕事についていたり、親族からの経済的援助を受けることができたりすることにより、子どもたちが、お金のことで苦労したり我慢したりしないですんでいること。
4,同居親以外に、いろんな面でサポートしてくれる人が身近に存在すること。
5,子どもからみて、同居親が、自分たち子どものために多大な苦労をしているとか、犠牲を払っているとか思わずにすんでいるということ。
どの条件も、なるほどなぁと思います。本書には子どもの生の声がたくさん詰まっていますので、是非、多くの方に手に取っていただければと思います。
さて、話は変わりますが、日々離婚事件に関わっていると、周囲の大人が思う以上に、子どもは主体的に親との関わりを考えていると気づかされることがあります。先日も、夫(父親)が面会交流を強く求め、家裁で試行面会がおこなわれたケースがありました。
父親の支配的言動に我慢できず母親と共に家を出た9歳の男の子が別居後半年余りを経て父親と対面。おもちゃで和やかに遊ぶ場面を作ろうとする調査官の思いとは異って、椅子に座り、父親の目をまっすぐに見据え、「僕とお母さんがなんで出ていったか、お父さん、わかってる?」「嫌やってん、しんどかってん」と訴える姿は衝撃的でした。子どもの懸命に発せられた言葉をお父さんはどう受け止めたのかな、とあれから私はずっと気になっています。