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2014年01月20日
DV

リレーエッセイ 婦人保護施設 〜光と影〜 河野 ひとみ (かわの ひとみ) 大阪府立女性自立支援センター 施設長

2013年7月に明石書店から出版されました『婦人保護施設と売春・貧困・DV問題』に一部執筆させていただいたご縁で、このリレーエッセィのお話をいただきました。

婦人保護施設は、戦後廃娼運動が進み、売春防止法制定以前から設置されていますが、売春をする女性に対する厳しい差別や偏見がありました。売春防止法は、何度も廃案を繰り返し、難産の末1956年に制定されたのですが、その後5ワ年を紅ても全くと言っていいほど改正されていません。用語だけ見ても「収容」「要保護女子」「更生」など実態に即したものではありません。売春は、社会構造的に発生するという認識の欠如から「要保護女子」の個人の問題として保護更生に力点が置かれ、本来救済されるべき「要保護女子」への福祉的視点が欠けていました。

今思えば、199ワ年、女性自立支援センターが開設された時もまだその片鱗があったような気がします。当時は22時に消灯後、職員はそっと居室のドアを開け、就寝しているか確認します。6時の起床時に起きていない人は部屋に入って起こします。「整理整頓日」と称して月1回抜き打ちで居室訪問し、持ち物などの点検をします。プライバシーもありません。それは安否・安全確認というより、規則正しい生活リズムをつけさせ、「更生」させるための「指導」でした。

それまで大阪府内に3か所あった婦人保護施設が統廃合して、女性自立支援センターが開設されたのですが、当初の利用者はその3施設から引き続き人所されていましたし、職員の多くも旧施設から来ていましたので違和感はなかったのでしょう。しかし、私はこの年、婦人保護施設に異動してきて、違和感と旧態依然としたものを感じていました。たった16年前の話です。もちろん今は改善していることを付け加えます。

2012年6月、これまでの婦人保護事業に携わる者たちの声が、民主党政権下の小宮山厚生労働大臣を動かし、「婦人保護事業等の課題に関する検討会」が発足しました。検討会は女性福祉に問する有識者、施設や相談所の代表等のメンバーによって5回開催されたのですが、自民党への政権交代によって、いったん終了ということになってしましました。この時「7つの課題が整理されたのですが、ここで立ち消えにしてしまったら、売春防止法の見直し等、またいつ国が動いてくれるかわからないので、その時のメンバーの有志が裾野を広げて活動を続けています。

障害者・高齢者・児童等に関する法律は何度も改正されています。何故売春防止法は改正されないのでしょう。他の福祉法と違って処罰規定があり、厚生労働省をはじめ関係省庁が複数あることで、所管を超えた検討がされにくいこと。そして何より、当事者組織がありません。売春防止法の当事者として声を上げる人はいません。では、この法律の当事者は誰でしょうか。支援者・職業人としてこの事業に携わっている私たちが代弁者として当事者にならなければならないのではないでしょうか。

婦人保護施設の稼働率の低さから、縮小論・廃止論もあります。売春防止法の不都合な部分・足りない部分を「運用」という形で乗り越えてきているので、支援を必要としている女性はもっといるはずなのですが、届いていません。一方、DV防止法施行後、DV一時保護は増加し、近年も横ばいの状態が続いています。婦人係護施設は一時保護委託施設として脚光を浴び始めました。当施設の利用者も約9割がDV・虐待を含む何らかの暴力の被害者です。別の主訴の場合でも、背景に暴力・売買春(性暴力)があることは珍しくありません。婦人保護事業による支援を必要としている人自体の数は減っていないのです。

2014年度、女性自立支援センター内にある3つの婦人保護施設は、稼働率の低さを理由に1施設が廃止されることになりました。と言っても建物が閉鎖されるわけではなく、現在と全く同じ状況で、同じ支援あるいはそれ以上の支援をしなければなりません。ただ運営費が削減されるだけです。

2006年度から女性自立支援センターも指定管理制度が導入され、今年度で期問満了になります。指定管理制度は、期間満了後も同じ団体が継続して指定を受けられる保証はなく、管理者が変更になった場合、ほとんどの職員が入れ替わります。2006年度指定管理制度によって、運営法人が変わったとき、当時の利用者には不安な思いや、迷惑をかけました。ですので、2014年度以降も事業継続を目指していますが、そもそも入所施設、特に婦人保護施設のように心身ともに傷ついてきている方たちばかりの施設に、この制度はそぐわないと私は思っています。

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