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2008年08月13日
子ども裁判事例
雪田 樹理

国籍法の婚外子差別は違憲 弁護士 雪田 樹理

【出生後認知では国籍が取れなかったが】

今年6月4日、最高裁大法廷で、外国人の母から生まれた婚外子の国籍取得について、憲法14条違反の判断が示されました。史上8件目の違憲判断だったようです。この事件は、フィリピン人の母と日本人の父の間に生まれた10人の子どもたちが、日本国籍の確認を求めたケースです。

国籍法は「生まれた時に父又は母が日本国民」である子どもに日本国籍を認めています。この場合の父・母とは、法律上の父母をさします。したがって、子どもが生まれた時に父と母が結婚している場合には、日本国籍となります。

ところが、父母が結婚していない場合に異なります。母が日本人であれば日本国籍を取得しますが、母が外国人で、父が日本人の場合には、生まれる前に父から認知を受けた場合(胎児認知といいます)には、「生まれた時に父が日本国民」であり、日本国籍を取得しますが、父の認知が生まれた後になされた場合(出生後認知といいます)は、父母が結婚しない限り、日本国籍を取得できません。

このように父母が法律上の結婚をしているか否かという、その子どもの意思や努力では決して変えることのできない事情によって、国籍取得に区別があるのは婚外子に対する差別だというのがこの裁判です。今回の最高裁判決は、出生後認知を受けた子どもが日本国籍を取得するために、父母の結婚を要件としている国籍法3条を、憲法14条1項に違反し無効であるとして、10人の子どもたちに日本国籍(届出による)を認めました。

 

【違憲判断の理由は】

私は、1995年に、このケースと同様のフィリピン人の母と日本人の父から生まれた姉妹のケースを担当しました。妹は胎児認知によって日本国籍を取得しましたが、姉は出生後認知だったために日本国籍を取得できませんでした。そのため、憲法14条に違反するとして、姉の日本国籍の確認を求めて提訴したのです。しかし、2002年に出された最高裁判決は合憲という結論でした。

ところが、今回の判決は、①父母が婚姻することによって、日本国民である父との生活の一体化が生じて、家族生活を通じた日本社会との密接な結び付きが生じるとしていた従前の判例の考え方を改めて、日本の社会的経済的環境等の変化に伴って、家族生活や親子関係に関する意識や実態が変化・多様化してきている、②また、胎児認知された子と出生後認知された子との間で、父との結び付きに差異があるとは考え難い、③諸外国でも婚外子に対する差別的取扱いを解消する方向にあり、国際人権規約や児童の権利条約でも、児童は出生によるいかなる差別も受けないと規定している、ことなどを理由に、遅くとも2003年の時点では憲法違反であると判断したのです。

 

【政府は婚外子差別の一層の解消を】

子どもは父母の婚姻の有無に関係なく平等であり、2003年でなくとも、そもそも国籍法の従前の解釈は違憲であるというのが私の考えですが、ともかく今回の最高裁判決は、外国人の母と日本人の父のもとに生まれた多くの婚外子たちにとって、大変嬉しい判決でした。

日本政府は、国連の国際人権規約委員会(1998年)や子どもの権利委員会(2004年)から、婚外子差別をなくすための法改正をするように勧告を受けています。今回の国籍法に続いて、相続分差別(婚外子の相続分は婚内子の2分の1です)をはじめとする様々な婚外子に対する差別の解消をしていかなくてはなりません。

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