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2007年01月30日
結婚・離婚
宮地 光子

始まる離婚時の年金分割制度 弁護士 宮地 光子

【保険料納付記録を夫婦で分割】

離婚事件は、男と女の収入格差との闘いです。専業主婦は、家事労働の無償性ゆえに、そしてパートで働いてきた主婦は、その低賃金ゆえに、圧倒的に不利な経済状態で、夫に闘いを挑むことになります。その不利な経済状態は、離婚後の年金格差となって、女性達を苦しめてきました。そんな状態を改善しようと、本年4月以降の離婚について、年金分割制度の運用が始まります。

この年金分割の適用があるのは、厚生年金に加入している給与所得者もしくは共済年金に加入している公務員が離婚する時です。そして分割の効果が及ぶのは、厚生年金や共済年金の報酬比例部分だけで、基礎年金(国民年金)の部分には及びません。

そして本年4月からの離婚について導入される年金分割制度は、婚姻期間中の厚生年金の保険料納付記録を、離婚の際に夫婦で分割するものです。妻も厚生年金に入っている場合は、妻の保険料納付記録も合計されます。そして夫婦で話し合ってどのように分けるか按分割合を決め、公正証書を作成して、社会保険事務所に分割請求を行ないます。

もしも当事者だけで協議ができない場合には、家事調停を申立てて話し合うこともできます。調停で話合いが成立して按分割合を調書に記載すれば、その調書で社会保険庁に分割請求ができます。調停でも話合いが成立しない場合には、裁判所に審判や判決で按分割合を決めてもらうことができます。

この保険料納付記録の分割を受けると、増えた保険料納付記録に応じた厚生年金を受給することができます。元配偶者が亡くなっても、自分の年金に影響することはありません。しかし年金分割は、年金の受給資格そのものをカバーするものではありませんので、自分自身が年金の受給資格を満たしていないと、いくら保険料納付記録の分割を受けても、厚生年金を請求することはできません。

社会保険庁は、昨年の10月から、按分割合を決めるために必要な情報の提供を行なっています。この情報に含まれるのは、分割の対象となる期間や夫婦の保険料納付記録、按分割合の範囲などです。この情報だけでは具体的な年金額を把握することが困難ですが、50歳以上の場合は、年金見込み額についても情報提供を行なってくれます。

 

【重要なのは、どう運用されるか】

私の担当した年齢56歳のAさんの場合、婚姻期間は30年。夫は今年60歳の定年を迎えますが、ずっと正社員で働いてきて、昨年の年収は約800万円でした。他方Aさんは、子育てが一段落したころから、パートで税金のかからない範囲で働いてきました。彼女が社会保険庁に情報開示の請求をしてみると、年金分割を行なわない場合の65歳からの年金の年間支給額は約90万円程度でしたが、50%の按分割合で年金分割を行なうと、65歳からの年金の年間支給額は約150万円となり、年間で約60万円アップすることがわかりました。こうして見るとやはり年金分割の効果には大きなものがあります。具体的にこの制度がどのように運用されていくのか、今年は年金分割制度を検証する重要な年になりそうです。

※なおもう一つの年金分割制度として、来年4月から施行される自動的分割制度があります。これは来年4月以降において第3号被保険者(多くの場合妻)だった期間については、離婚の際に、一方当事者からの請求により、第2号被保険者(多くの場合夫)の保険料の納付記録を自動的に2分の1に分割するものです。

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