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2007年01月30日
平和・人権
雪田 樹理

教育基本法の改正について 弁護士 雪田 樹理

【愛国心が成績評価の対象に?】

昨秋に誕生した安倍政権は、教育を最重要課題と位置づけてスタートし、教育再生担当の首相補佐官として山谷えり子氏を指名しました。山谷えり子氏は、夫婦別姓に反対したり、性教育を攻撃したりと、これまでも安倍総理とともに男女平等を進める動きに逆行する立場をとってきた人物です。一昨年の事務所ニュースで、憲法9条とともに、家族における男女平等を保障した憲法24条を変えようとする動きのあることを述べましたが、安倍政権の誕生によって、いよいよそういった国造りが始まったようです。

実際に、安部政権は、さっそく教育基本法を瞬く間に改正してしまいました(原稿を書いている現時点では法案が衆議院を通過したところですが、このニュースが発行される頃には残念ながら改正されてしまっているでしょう)。教育基本法は、憲法にも準ずる国の基礎をなす重要な法律です。その法律が改正されてしまうことには極めて大きな意味があります。

教育基本法は、戦前の教育が国家による国民統制の手段とされ、国家主義的な教育が行われたことへの反省から生まれました。国や政治による教育に対する不当な支配を排除し、教育の自主性や自律性を保障する「国民の教育権」という考え方、教育の主権者は国民であるという考え方に基づいていました。しかし、今回の改正によって、国や地方公共団体が教育の内容に介入し、政治的な影響力を行使することのできる恐れが生じてしまいます。

また、教育の目標という新しい条文が設けられ、その中には「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する・・・態度を養うこと」という、いわゆる愛国心教育が盛り込まれました。伝統や文化を尊重すること、また、自分の国を愛することに問題があるわけではありませんが、法律によって、国に強制されるべき事柄ではないと思います。既に一部の地域で導入されていますが、愛国心の有無や程度が、子どもたちの成績評価の対象にまでなってくる可能性があります。既に実践されている愛国心教育の例として「日本は四季があってすばらしい国だ」という授業が行われていることを聞きましたが、四季のある日本こそが他国に抜きん出てすばらしい国であると教えることで、日本以外の国を蔑視し、日本国籍を持たない子どもたちを排斥する意識をつくっていくことになりはしないか。そういう危険性を感じてしまいます。

 

【格差を生む「学校選択制」】

こういった問題のある教育基本法が、多くの反対意見があったにもかかわらず、衆議院では与党のみで強行採決されてしまいました。しかも、国民の意見を聞くタウンミーティングでは、文部科学省が賛成意見のやらせ発言を指示していたり、不正な支出がなされていたにもかかわらずです。

教育基本法の改正と同時に、安倍政権の教育再生会議では、イギリスで既に教育格差を生じさせ、失敗したとされている学校選択制を導入しようという議論がなされています。学校選択制は、学校間の格差を生じさせることになります。教育の世界にまで格差を生じさせることは、ますます「格差社会」を助長し、固定化することになるのではないでしょうか。

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