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2002年09月16日
DV事務所関連
乘井 弥生

DV事件にみる司法の課題 弁護士 乘井 弥生

はじめに家庭の問題を取り上げます、最近、ドメステイック・バイオレンス(以下、DVとする)のからんだ離婚事件を受任することが増えています。男性が昔より暴力的になったわけではなく、女性が声を上げられるようになってきたのだと思います。実際、DVに対して、社会的に解決しなければならない問題として認識され、DVををくすための施策が広く議論にのぼってきたのはここ4~5年のことです。

こうしたDVの問題に対して警察官、家庭裁判所の調停委員、弁護士、検察官、そして裁判官といった司法関係者はこれまで何をしてきたでしょうか。昨年行われた近畿弁護士会連合会のアンケート調査では、警察官と家庭裁判所の調停委員の対応を問題にしている回答が多くみられました。警察に被害届を出そうとしたら、「1年間も一緒に住んでいた男のことを訴えるというのか、おまえは」と言われ取りあってもらえなかった。家裁の調停委員に「(夫は)○○大学出身の人だから暴力を振るわないのでは」「あなたにも問題があるのではないか」と言われた、などです。

しかし、警察官や家裁の調停委員は、DVの被害者がまず最初に出会う人たちであるために問題視されるケースが多くなっているだけで、次のステップで出会うほかの司法関係者がDV被害をより深く理解しているかといえば、残念ながらそうではありません。

このアンケート結果に出てきた非常にショッキングな例をご紹介します。家裁での調停がうまくいかず、離婚訴訟を起こし、地方裁判所で判決が出て高等裁判所で和解という手続きになったケースです。和解の期日に裁判官の一人が、「俺も女房を殴ることがある」と発言したというのです。「その程度のことで騒ぎなさんな」というようなニュアンスです。

暴力が悪いことだというのは、3歳の子どもでも知っています。他人に暴力をふるえば暴行罪、けがをさせれば傷害罪という、立派な犯罪です。高裁の裁判官が職務遂行のなかで、自分もその犯罪を犯したことがあると発言するのがどれだけ異常な事態か、おわかりいただけると思います。たとえば覚醒剤を使用して起訴された被告人の前で、「僕も以前、覚醒剤を打ってたことがあるんですよ、覚醒剤に流れる気持ちはわかるがやめときなはれ」と(会場笑)、言うでしょうか。考えられないことです。自分も違法行為をやっているということを、ぽろっとでも口に出すのは、家庭というプライベートな場で男性が女性に暴力をふるうことを大したことではない、と捉えているからでしょう、このようなジェンダー・バイアスのかかった目でみているために、形の上では違法だけれど、違法と扱わなくてかまわないと、多くの司法関係者が思っている。家庭内での人権侵害について、かくも鈍感な状態が、今も続いているのです。

この問題については、司法試験に合格したからわかっているはずだとか、法律家として仕事をしているから公正な判断ができるはずだと、今まで私たちはあまりにも信じ過ぎてきたように思います。ところが、事実はそうではなかった。さらにいうと、女性だから女性の抱える問題を理解しているというわけでもないのです。

私は女性に対する暴力はいやだという気持ちをずっと持っていましたが、それでも以前は「なぜ彼女たちは自らの状況を変えようとしないのか」といった憤りの気持ちが強く、被害女性の心理を理解しきれない部分があったように思います。今だってわからないことはたくさんです。ただ、DVの事例に接し、問題を解決するなかで実態に学ぶことが多くありました。

ほかの司法関係者も、学べば必ずわかるはずです。女性の人権はまだ十分に公正に扱われていないという事実を意識的に発信する必要性を感じています。

—ドメスティック・バイオレンス(DV)の実態—日弁連資料より

 年齢

20歳代~60歳代

 暴力に耐えてきた期間

10年以上4割、3年未満3-4割

 夫の職業

会社員、公務員、教員、自営業で8割

 暴力のきっかけ

酒、女性関係、機嫌次第
 暴力の内容 殴る、蹴る、髪をつかんで引きずる、モノを投げる
首を締める、レイプ
 傷害の程度 骨折、打撲、火傷、流産
 警察への連絡 4分の1にすぎない
 対応 半数は駆けつけるが、そのうち事件取扱は1割未満
 避難先 なしが5割、実家が3割弱

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