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ニュースレター

2016年01月01日
裁判事例
乘井 弥生

逮捕から20年を経て釈放! 再審・東住吉事件のご報告                【弁護士 乘井 弥生】

【大阪高裁でも再審開始決定】

これまでニュースレターで何度か紹介をしました再審・東住吉事件について、昨年10月、大きな動きがありました。ご報告いたします。

東住吉事件とは、1995年7月22日、大阪市東住吉区の住宅で火災が発生し、入浴中の女児(当時小学6年生)が亡くなるという事故が起こり、女児の母親である青木惠子さんと当時内縁の夫であった朴龍皓さんが「保険金詐取目的放火殺人」の嫌疑をかけられ、同年9月10日に逮捕、その後、1審、控訴審、上告審で有罪とされ、無期懲役の刑が確定した事件です。

二人は一貫して無実を訴えていましたが、捜査段階にとられた自白をほぼ唯一の証拠として、有罪が確定したため、2009年、弁護団は大阪地裁に再審を請求しました。約2年半の審理の後、2012年3月7日、地裁は「自白は科学的見地から不自然不合理であり」「自白の信用性には疑問がある」として再審開始(裁判のやり直し)を決定。しかし、これに対して検察が即時抗告をしたため、大阪高裁で抗告審が審理されていたものです。

大阪高裁での審理は3年余りに及び、昨年4月末に審理が終結。その判断が待たれていたのですが、昨年10月23日、大阪高裁は「(検察側の)即時抗告を棄却」、すなわち地裁の再審開始決定を支持する判断を下しました。

大阪高裁の決定は、弁護側の主張をほぼ認める内容でした。まず、本件火災の原因として、満タン給油直後であった軽自動車からガソリンが漏れ、風呂釜種火に引火した事故であった具体的可能性(自然発火の具体的可能性)が否定できないとし、その上で、有罪の根拠とされた自白には有罪を認定するに足りる信用性がないと判断したのです。不幸な火災事故が、「保険金詐取目的放火殺人」という冤罪事件に作り上げられてしまったことが明らかとなったのです。

高裁は「即時抗告棄却」の決定と同時に、二人に対するこれ以上の身柄拘束は正義に反するとして、刑の執行停止を決定。10月26日、和歌山刑務所で受刑中の青木さんと、大分刑務所で受刑中の朴さんは、逮捕から20年の時を経て、ようやく釈放されました。

 

【失われた20年の意味するもの】

釈放の日、大分刑務所に迎えに行った私は、午後2時、刑務所の開いたシャッターから出てきた朴さんと初めて握手を交わしました。1995年は私が弁護士登録をした年でもあり、朴さんとの関わりは20年になります。でも話をするのはいつもアクリル板越しでした。大分刑務所前に集まった報道陣、支援者を前に、彼は、「自由の身になり感無量。まるで遠い外国の地に立っているようで、まだ、現実感がありません」と述べていました。釈放後、朴さんは、支援者が淹れてくれたコーヒーを美味しそうに飲みほし、また、伊丹に向かう機上では、関西が近づくにつれ輝きを増す夜景を、ずっと黙って眺めていました。絶望することなく無実を訴え続け、ようやく自由の身になったことを実感した時ではなかったかと思います。

振り返って、なぜ、二人が長期間、放火殺人犯という汚名を着せられ自由を奪われる必要があったのか、改めて検証される必要があると思います。軽視された科学捜査、取調室という密室での自白強要の事実、そして、何よりも捜査段階でできあがった自白を易々と信じ、自白にのっかかってなされている刑事裁判の事実認定の危うさです。また、公益の代表者である検察官が重要な証拠を開示しようとせず、そのために、審理が長期化し、事実認定が歪められてきた実態も改めて検証される必要があります。

高裁の即時抗告棄却決定に対して、検察は最高裁への特別抗告を断念し、2009年に申し立てた再審請求は確定しました。今年、裁判のやり直し(再審公判)が始まります。

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