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2015年07月22日
DV

リレーエッセイNo.28                                         「心理的支援に力を入れた自立トレーニング事業を始めました」              -一般社団法人WANA関西代表理事 藤木 美奈子- 

貧しいシングルマザーの子どもとして全国を転々、児童虐待・DVを受けて育つ。女子刑務所看守を経て、1995年NPO法人「WANA関西」を設立、活動20年目。元大学准教授。暴力被害の当事者・研究者として内閣府主催のシンポジウムやNHK番組「DVにさらされる子どもたち」等に出演。『傷つけ合う家族』『女子刑務所』(いずれも講談社文庫)他、著書・講演多数。http://www.wana.gr.jp

 

「おはようございます〜」、様子をうかがうように利用者のAさんがそっと入ってくる。

「あ、Aさん!今日は来れたね、よかった!」、スタッフから歓声が上がる。

 

Maluhia(マルヒア)は、おもに精神や知的など身体以外の課題をかかえた方が、体力・気力を養うために通ってくるエンパワメントの場所だ。「障がい福祉サービス」という国の制度のひとつで、すぐに仕事に就くのは難しいが、生活リズムを整えて社会に出たい人を対象とした事業で、「自立訓練(生活訓練)」と呼ばれる。

 

開業は2015年4月。大阪市中央区に位置しており、最寄駅は堺筋本町、北浜、谷町四丁目とビジネス街のど真ん中だが、意外やこの界隈は都会のオアシスである。瀟洒なビル群の裏手には東横堀川が流れ、観光客を乗せた船が通る。川の両岸に立つ木々は季節ごとに花や実を競い、それを眺めながら手打ち蕎麦が楽しめる店やお洒落なカフェも居並ぶ。その風情は、さながら京都の床に来たようだ。

Maluhiaはハワイ語で「平和、静寂、平穏」を意味する。その名の通り、室内へ一歩入れば木目調のブラウンを基調とした大人向きの内装と緑豊かなしつらえ。これまでの福祉とはちょっと違ったイメージなのは、ここで働くスタッフが何より心の充実と平和を大切にしているからだ。なぜなら、スタッフ6名は臨床心理士や社会福祉士・介護福祉士、キャリアコンサルタントなどの資格保持者であると同時に、DVや虐待などの暴力被害者だったり、精神的な課題をかかえる家族を持っていたりする。事業所の当事者性は極めて高い。

 

運営には、私、藤木が代表を務める一般社団法人WANA関西(ワナカンサイ)が当たっている。私は心理臨床を専門とする研究者として、大阪市こども相談センターや関西大学大学院、立命館大学で非常勤講師をしている。これまで20年、女性や社会的弱者の経済的自立支援を標ぼうするNPO法人として活動を続けてきた中で、精神的な課題をかかえ、外に出られなくなった人の受け皿を医療の外でつくる必要性を強く感じてきた。

いきなり仕事、ではハードルが高すぎる。かと言って、自力での脱出を待っているだけでは問題はいつまでも解決しない。その橋渡し役として、場所と専門性を備えた人材、そして科学的根拠に裏付けられた手法が必要だった。

 

現在、最も力を入れているのは併設の「SEP研究所」が展開する自尊感情を高める効果のあるプログラム「SEP(Self-Esteem Program)」である。これは2008年より、おもに母子生活支援施設で実施してきた短期のグループ療法で、自己理解を深める心理学習と、ストレスにより片寄った考え方(認知)を修正するトレーニングをパックにした認知行動的アプローチである。2014年末からは一般にも門戸を開いており、全国各地から参加者が通って来ている。家族関係に課題をかかえた人がほとんどで、年齢も20〜50歳代とバラバラである。それだけ家族から負わされた傷は深刻であり、回復は容易でないということだ。

 

このプログラムの研究開発の背景には、私自身が困難な家庭に育ち、虐待的養育やDV被害の後遺症から立ち直った経験がある。受講した参加者からは、「気持ちがラクになった」「どう考え方を変えればいいか方法がわかった」「これまであちこち治療に通ったが、効果がなかった。もっと早く知りたかった」などの声が寄せられている。一方、こうした手法を学びたい対人援助者向けの研修も実施している(SEPに関する情報はブログ http://blog.wana.jp )。ひきこもり解消のための「通所支援」も効果を上げている。今後もニーズに即応したサービスを展開したいと考えている。

 

この文章を読んだあなたが、もしMaluhiaを利用して自立訓練を受けたいと考えたら、あるいは身近な人に勧めたいと思ったら、まず「障がい福祉サービス受給者証」が必要だ。お住まいの各市町村役所の窓口に相談してほしい。所得に応じた利用料で、前年度に収入がなければほぼ自己負担なしで最大2年間通所できる。朝10〜16時まで、月曜から金曜まで開いているので、まずは見学・体験から始めてほしい。自己理解と障がい受容のための「当事者研究」や、ソーシャルスキルトレーニング「SST」、PC練習や四季折々のお料理など、多彩なカリキュラムに取り組むことで、社会へ一歩足を進めてほしい。Maluhiaのスタッフはそんな願いを胸に今日もドアを開けて待っている。

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