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2015年02月01日
平和・人権

リレーエッセイvol.27                             「ヘイトスピーチを正しくとらえ、 対処していくために」                       -特定非営利活動法人コリアNGOセンター代表理事                     郭 辰 雄(カク チヌン)-

「殺せ!殺せ!朝鮮人」
「いつまでも調子にのっとったら、南京大虐殺じゃなくて、鶴橋大虐殺を実行しますよ!」
2013年2月、日本で最も在日コリアンが集住する鶴橋で繰り広げられたヘイトスピーチに私たちは言葉を失った。

2007年に「在日特権を許さない市民の会」が設立され、各地で在日コリアンに対する攻撃が広がっていった。それはまず在日コリアンのなかでも弱者に向けられた。1981年まで国籍条項によって年金制度に加入できず、国籍条項撤廃後もすでに支給年齢をすぎていたために年金制度から除外されて続け、それを民族差別であると訴えた無年金のハルモニ(おばあさん)たちに対して、彼らは攻撃をおこなった。次には在日コリアンの子どもたちが通う民族学校をその標的とし、「スパイ養成機関」「日本から叩き出せ」とあらん限りの罵詈雑言を子どもたち、保護者、教員にあびせかけた。

そしていまや日本全国に彼らの活動範囲は広がり、その回数も2013年度だけで360回を超えている。

鶴橋駅前で「大虐殺」を叫んだのは、中学二年生の女子学生だった。そのヘイトスピーチを間近で聞いたある在日コリアンの小学生が、目に涙を浮かべながら母親にこう尋ねた。「在日コリアンってあかんことなの?」。
街頭で発せられる「出て行け!」「殺せ!」という言葉は、在日コリアンにとってはすべて自分に向けられた刃であり、深く心が傷つけられるものだ。

これは紛れもなく深刻な人権侵害であり、絶対に許されてはならない。

私たちもこの鶴橋ヘイトスピーチをきっかけにして、もう二度と在日コリアンの目の前でヘイトスピーチを許さないために、多くの人々に呼びかけカウンター行動を開始、彼らの聞くに堪えない言葉が地域の人たちの耳に届かぬよう、彼らを包囲し、差別反対の声をあげた。また、実際に彼らの行動を阻止するために、各方面に働きかけてなんとか規制できないかという問題提起をおこなってきた。

だがそうしたときに絶えず問題になるのが「表現の自由」であった。

「殺せ!」「叩き出せ!」という言葉が「表現の自由」の名のもと、警察に守られながら堂々と街頭で発せられ、それに抗議する市民の行動が「表現の自由」を脅かすとして厳しい規制を受けることにどれほど歯がゆい思いをしたことだろう。

ヘイトスピーチは明らかな差別であり、相手の人格や尊厳を否定し、憎悪を扇動することにその目的がある。したがって彼らとの間には「対話」などは成り立たたず、ヘイトスピーチを向けられる当事者は沈黙を強要されるしかない。ヘイトスピーチに対抗する人々の「表現の自由」が実質上、奪われ続けているのが現状なのである。

しかし、ヘイトスピーチを許すなという人々の声は着実に広がりを見せ、京都朝鮮学校襲撃事件裁判での高裁判決や、7月の自由権規約委員会、8月の人種差別撤廃委員会の法規制を求める勧告、あるいは国会での人種差別撤廃基本法案制定の動きなど、各界でヘイトスピーチ規制に向けた動きが活発化しており、一刻も早くヘイトスピーチ規制が実現されるよう期待したい。

一方で、ヘイトスピーチにどう向き合うかは、日本の将来にとって二つの側面で重要な意味を持っていると思う。それは、明らかな人権侵害行為にどう毅然と対処していくかという、人権課題の側面、もう一つは、現在のヘイトスピーチが「慰安婦問題」をはじめとする過去の歴史をめぐる「歴史修正主義」と深く結びついているがゆえに、これからの東アジア諸国との関係に対する視点が不可欠であるという側面である。

2015年は「戦後70年」「韓日条約締結50年」の節目の年を迎える。ヘイトスピーチをめぐって、それをどう規制するかという課題とともに、それが「主張は正しいが、やり方が問題」という論議ではなく、「在日特権」なる虚構そのものを問うていく論議が必要になってくるのではないだろうか。

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