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2016年01月01日
結婚・離婚子ども
角崎 恭子

子どもの引渡しの強制執行の現状       【弁護士 角崎 恭子】

【直接強制と間接強制】

未成年の子どもがいる夫婦が、例えば別居をするにあたり、主に離婚するまでの間、どちらが子どもを手元で育てるか争いになることがあります。法律上、手元で子どもを育てることを「監護」と言います。

監護に関して争いになった場合、子どもと引き離されてしまった親は、裁判所に対し、審判や調停で、「子の引渡し」や「監護者の指定」を求め、裁判所に、子どもの監護者に指定してもらい、もう一方の親に対して、子どもを引き渡せと命じてもらう必要があります。

審判で、子どもの監護者が指定され、子の引渡しが命じられても、引渡しを命じられた親が、監護者に指定された親に、任意に子どもを引き渡すとは限りません。そのような場合は、強制執行を行う必要があります。強制執行と聞くと、給与や預金等の債権の差押が思い浮かぶかもしれませんが、子の引渡しは、子どもを、監護者に指定された親の元に実際に移す手続きですから、債権の差押のような企業や金融機関相手の手続きとは全く異なります。

子どもの引渡しについての強制執行には、直接強制と間接強制があります。直接強制とは、裁判所の執行官が、現に子どもと共にいる親の元に臨場し、子どもを実際に引き渡してもらう手続きで、間接強制とは、引渡しを命じられながら引渡しをしない親に対して、子どもを引き渡すまでの間、一日毎に、裁判所に定められた金額を、監護者に指定された親へ支払わせる、という手続きです。

ただ、子の引渡しの直接強制には、実は、条文が定められていませんので、「動産」の引渡しの条文(民事執行法169条1項)を類推適用して、子の引渡しを行います。具体的には、執行を行う際、実際に子どもがどこにいるかを特定し、執行官と共に監護者に指定された親と代理人がその場所を訪れ、執行官が引渡しを命じられた親を説得して、子どもを渡してもらいます。子どもがどこにいるか分からなくて、執行を行えないこともありますし、子どもや引渡しを命じられた親に会うことができても、その親が説得を聞き入れない場合もあります。ですので、子の引渡しの直接強制が成功する事件は少ないのが事実です。

 

【専門家の同行が子どもにプラス】

執行時に、子どもが拒絶した場合や、泣いて引渡しを命じられた親にしがみついた場合等は、いくら子どもでも人格を持ったひとりの人間ですから、無理やりに引き離して連れて行くことはできません。親が感情的になってしまう場合もあります。

以前は、その場で紛争が生じた場合のために、警察官に同行してもらうことが多かったのですが、現在では、ハーグ条約に関連して定められた「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律」における強制執行を参考に、臨床心理士や社会福祉士等の専門家に同行してもらうことがあります。

先日、当職が担当した事件でも、子の引渡しの直接強制を実現できた事件がありました。その事件では、引渡しを命じられた親の居場所を探し、執行官と打ち合わせを重ね、何度もあちこち出かけ、やっと、引渡しを命じられた親と子どもに会うことができました。2時間を超える説得の末、ようやく子の引渡しを受けることができたのですが、その際も、専門家に立ち会ってもらい、現実に引渡しを受ける際には、子どもに対して、専門家が話しかけ、抱っこをして、少し離れたところで待機していた監護者に指定された親の元に連れて行きました。専門家の対応もあってか、子どもは泣くこともなく、落ち着いた様子で、監護者に抱き上げられると、間もなく寝入ってしまいました。子どもの寝顔を見て、当職自身もとてもほっとしました。

現在、子の引渡しの直接強制について、明文で定めるよう法改正が予定されています。子どもの引渡しの直接強制は、子どもが適切な監護を受けるための最後の砦と言えますから、どのような条文が定められるか、当職も注目しています。

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