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2016年01月01日
性差別・ジェンダー平和・人権
宮地 光子

憎しみの贈り物はあげない          【弁護士 宮地 光子】

【私と息子は世界中の軍隊より強い】

昨年11月13日の夜、パリで起きた同時多発テロの報道に、これでまた世界中に、憎悪が連鎖していくのではないかと暗澹たる思いにとらわれた。そんな思いを打ち消してくれたのが、フランス人ジャーナリストであるアントワーヌ・レリスさんが、フェイスブックでテロリストに向けてつづった文章だ。

「金曜日の夜、君たちは素晴らしい人の命を奪った。私の最愛の人であり、息子の母親だった。しかし君たちを憎むつもりはない。……君たちは、神の名において無差別な殺戮をした。もし神が自らの姿に似せて我々人間をつくったのだとしたら、妻の体に打ち込まれた銃弾の一つ一つは、神の心の傷となっているだろう。だから、決して君たちに憎しみという贈り物はあげない。君たちの望み通りに怒りで応じることは、君たちと同じ無知に屈することになる。」

そしてレリスさんは、変わり果てた妻・エレンさんとの再会時の思いを綴ったあと、こう文章を結んでいる。

「私と息子は2人になった。でも世界中の軍隊よりも強い。そして君たちのために割く時間はこれ以上ない。昼寝から目覚めたメルビルのところに行かなければいけない。彼は生後17か月で、いつものようにおやつを食べ、私たちはいつものように遊ぶ。そして幼い彼の人生が幸せで自由であり続けることが君たちを辱めるだろう。彼の憎しみを勝ち取ることもないのだから。」

このレリスさんの文章は、1週間足らずの間に、フェイスブック上で20万回以上共有されたという。

 

【戦争法の強行採決】

私たちの仕事は、暴力で物事を解決しようとするDV夫に、「暴力は許されない」と言い続けることである。しかし安保法制の国会審議が行なわれていた昨年7月7日、安倍首相は、自民党のインターネット放送番組に出演してこんな話をしたという。

「『安倍は生意気だ』と私を殴ろうとする不良がいる。すると麻生(麻生太郎財務相)という友だちが『おれはケンカが強いから守ってやる』と言って一緒に家に帰ってくれた。そこに3人くらいの不良が出てきて、前を歩いていた麻生さんに殴りかかった。3対1だから私も麻生さんと一緒に対応する。これが今回日本が行使しようとしている集団的自衛権だ」

暴力容認のとんでもない例え話である。そして昨年9月19日、戦争法(平和安全関連法)が、ついに強行採決された。

さらに昨年11月11日には、防衛省が自衛隊戦闘機のパイロットに、女性自衛官を配置する方針を固めたと報道された。安倍首相のいう「女性が活躍する社会」とは、女性も平等に戦争に駆り出される社会だったのかと、これまた暗澹たる思いに囚われた。

 

【戦争とジェンダー】

なぜ戦争はなくならないのか。そんな素朴で根源的な問いに対する答えが欲しくて、『戦争とジェンダー』(大月書店、2005年)という本を取り寄せた。著者の若桑みどりさんは、すでに亡くなられたが、美術史の著名な学者でありながら、ジェンダー史・ジェンダー文化論にも研究のフィールドを広げられただけあって、本の内容は、豊富な歴史・美術史の知見に裏付けられて、とても面白い。人類の歴史の中で、戦争のない時代のあったこと、そして戦争とジェンダーの深い関係を知ることができる。若桑さんは、本の中でこう述べている。

「今日、私はテレビで憲法改正の委員会の会合をみたが、それはグロテスクな眺めで、全員中高年の男たちの群れであった。……この国の運命を決めているのは、女や若者を含む国民ではない。自分では絶対に戦争に行かない、支配層の『男性同盟』である」。

この支配層の「男性同盟」は、強固であるけれど、あちらこちらで矛盾を来たしている。女性、若者、そして支配層の「男性同盟」に異議申立てのできる男性たちとの連帯こそが、新しい時代をつくっていくのだと思う。今年も、諦めないで、「暴力は許されない」と言い続けたい。

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