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2016年08月30日
DV

DV、ストーカー被害を減らすために     【弁護士 和田谷 幸子】

 【 1 保護命令制度とは】

私たちが、離婚相談等においてDV被害を確認した場合、まず、保護命令の申立てを検討することになります。

保護命令制度とは、配偶者からの暴力により被害者の生命・身体に重大な危害が発生するおそれが大きいと認められる場合に、すみやかに、被害者の生命・身体の安全を確保し、家庭の平穏を確保するため、裁判所が、加害者に対し、一定期間、被害者への接近禁止等を命じる制度です。

保護命令が発令されると、被害者は警察による特別なサポートを受けることができ、命令に違反した加害者には刑罰が科せられるという点で、被害者にとっては心強い存在であり、時に命綱ともいうべき存在です。

 

【2 被害者の「生命又は身体に対する重大な危害を受けるおそれが大きい」と認められるためには】

しかし、過去に暴力を受けているからといって、必ず、保護命令が発令されるわけではなく、配偶者からの(更なる)暴力によって、「生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きい」ことが必要となります。

この点、最近、私が担当したケースで、妻側の母が夫にに対し着信拒否などの措置を取っていなかったことが、「更なる暴力のおそれ」を否定する事情の一つとして考慮されるということがありました。

裁判所は、真に差し迫った危険があるのであれば、被害者側は危険を回避するため、当然、着信拒否するはずであり、それが期待されると考えたのかもしれませんが、このような判断に、ほとんどの当事者の方は、違和感を持つのではないでしょうか。

そもそも、DV被害者は、過去の暴力の記憶から、誰よりも加害者からの反撃をおそれています。このため、着信拒否すれば逆うらみされるのでは、とか、着信拒否した場合、相手の動きが分からず、奇襲攻撃に遭うのではないかと不安を感じる方も多くおられます。

私が担当したケースでも、母が着信拒否をしていなかったのは、母が妻本人の代わりに夫の挙動を把握し、事前に危険を察知することが目的でしたが、裁判所は、その事実を、妻にとって不利な事情の一つとして認定したのです。つまり、裁判所は真に差し迫った危険があれば、当事者は着信拒否をするのが合理的と考えたわけです。

たしかに、将来の危険予測には限界があり、裁判所も万能でありませんが、被害の発生を未然に防止するには、裁判所を含めた各機関がもっとDV事件の特殊性、加害者と被害者の複雑な関係、被害者の深層心理を理解する必要があると感じました。

なお、このケースでは、その後の離婚訴訟において、離婚後、夫は妻やその母に接触しないこと、夫は子どもたちに面会交流を求めないことを条件に和解が成立しました。

 

【3 DV、ストーカー事件から被害者を守るために】

平成28年5月、東京都小金井市で歌手活動をしていた女性が、ファンであった男性から刃物で刺されるという凄惨な事件が起きました。

この事件の被害者は、刑法やストーカー行為等の規制等に関する法律等による保護の対象となりえますが、武蔵野警察署は、本人から事前の相談があったにも関わらず、SNSへの「書き込みが本人によるものか調査が必要」として加害者に接触せず、書き込みの内容が、「すぐに危害を加えるような書き込みではない」として、ストーカー事案等を担当する部署に情報を伝えていなかったと報道されました。

しかし、加害者による多量のSNSのなかには「そのうち死ぬから安心してね」との自殺や殺害予告ととれるような書き込みもあったようで、その態様、内容からすれば、被害者保護の必要性は急務だったと言えます。にもかかわらず、警察は、そのシグナルを見逃し、悲惨な結果を招来することとなりました。

DV、ストーカー被害の当事者には一定の関係性があるため、何らかの予兆がありますし、通常、被害者は、事前に身の危険を察知しています。現在、SNSも規制対象とする改正の動きが高まっていますが、被害者を守るためには、法整備だけでなく、被害者に接する各機関が、被害者の訴えに真摯に耳を傾け、感覚に磨きをかけ、事実を適正に評価するということが大切ではないでしょうか。

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